「スタバ×町の老舗喫茶店」が生む新たな憩いの場 顧客の思いも踏まえ木々を生かした受け継ぎ店に

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さらにこう続ける。

「コロナ禍の現在ですが、お越しいただく方には、少しでも前向きになっていただけるよう、明るく接客します。1㎞ほど離れた先には、桜の名所として知られる小金井公園があり、休日は公園に行かれた後で来店される方も目立ちます。日常づかいの店ですが、ちょっとした観光気分でもご利用いただいているようです」

従業員の中には、祖母が「くすの樹」の常連客で、一緒に行った経験を持つ学生アルバイトもいるという。飲食店は「思い出も提供する」とも言われるが、それを感じる話だ。

取材したのは平日の午前中で、店内47席、店外(テラス)10席はほぼ満席、テレワークらしき行為を行う人も目立った。「常連さんも増え、顔がわかる方も多くなりました。みなさん、思い思いの時間を過ごされています」(持田さん)。

ストアマネージャーの持田良将さん。コーヒー関連知識などを問う、難関の社内試験合格者に与えられる「ブラックエプロン」の4年連続保持者だ(筆者撮影)

「前の店を意識してくれて、ありがたい」

実は、西東京新町店はスタバの直営店だが、土地は前店主が所有する。近年はホテル経営などで目立つ「所有と運営が別」なのだ。その前店主が下田保全有限会社の下田欽司さん(会長)、明仁さん(社長)親子だ。江戸時代から続く豪農だった下田家は不動産業も営み、会長で8代目と聞く。

「珈琲館 くすの樹」を開業したのは父で、息子も会社員生活の後、店に入り接客を行ってきた。そんな2人は、スターバックスの店づくりについてこう話す。

「前の店のことを意識して、ここまでやってくれるとは正直思っていませんでした。本当にありがたいですね」(欽司さん)

「店のスタイルが違うので、中には違和感を持つ人もいるかもしれませんが、私どもとしては(受け継ぎ店として)間違いないと思っています」(明仁さん)

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