「スタバ×町の老舗喫茶店」が生む新たな憩いの場 顧客の思いも踏まえ木々を生かした受け継ぎ店に
完成した新店舗で説明すると、「変えなかった部分=保存樹木、天井の高さ、店内の丸太」など。「変えた部分=開放感とつながり」だった。その意図を及川さんが続ける。
「まず、保存樹木のクスノキ、イトヒバ、アオギリを生かした店舗デザインを考えました。以前の店の特徴だった三角屋根も継承しましたが、形は変更。西日を押さえつつ、朝日が入るようにしています。一方、開放感では窓越しの景観も楽しめるようにしました」
1979(昭和54)年に開業した「くすの樹」の外観は山小屋風で、店内は昭和の喫茶店らしい、少し薄暗さも特徴的。当時はこうした空間が人気だったのだ。メニューは「世界のコーヒー」を掲げ、ブルーマウンテン・キリマンジャロ・モカの三大銘柄を中心に、ソフト珈琲や本葛コーヒーもそろえた。サンドイッチなどパンメニューも充実していた。
「生活になじむ、普段づかい」
西東京新町店の店内で存在感を放つのが丸太だ。「前の店に通われていた人も、この風景は印象的だっただろうな、と思いました。そこで今までの記憶を残し、次につなげたいと考えたのです。テーブルは八王子産のクスノキ、カウンターの後ろの壁にはコーヒーの豆かすを入れ込むなど、マテリアル(原材料)選びも意識しました」(及川さん)
自分がこの町に住んでいたら、どんな利用になるかも思案し、「生活になじむ、普段づかい」を掲げた。特別感ではなく「自宅リビングの延長」を意識したので、同僚からは「本当にリビングみたいだな」と言われたという。
運営する店舗スタッフは、どんな思いなのか。ストアマネージャー(店長)の持田良将さんが、開業時と現在の状況を説明する。
「2020年11月25日に開業したのですが、当時は外まで行列ができ、店内に入るまで最大60分もお待ちいただくこともありました。現在は落ち着きましたが、多くのお客さまにご来店いただいています。店には29人のパートナー(従業員)がいますが、地元出身の人や大学生も多く、保存樹木や、くすの樹さんの店のヒストリーは共有しています」
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