路線バスで巡る「レトロな横浜」のんびり日帰り旅 バラ園に氷川丸見学、意外と知らない街の一面

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山下公園前14時45分発の「あかいくつ」で出発。バスは開港広場で右折し、「横浜港大さん橋国際客船ターミナル」に寄り道する。この便の運転士は〝おもてなし〟の精神がいっぱいのようで、既成の案内放送のあとに、タイムリーな耳より情報を聞かせてくれる。大さん橋では入港する豪華客船の予定のあと、「7月のスパークリング花火の日には、プレミア観賞席になりますので、皆様ぜひいらしてください」とつけ加えた。

生まれ変わった赤レンガ倉庫

開港広場に戻り、海岸通りを横浜税関前まで行く。新港橋を渡り、再びやってきた赤レンガ倉庫前で降りる。「横浜赤レンガ倉庫」は明治政府が保税倉庫として建設したもので、1980年代には役割を終えて次第に荒廃していく。しかしそのレトロな雰囲気から、日本テレビのドラマ『あぶない刑事』のロケ地になると、にわかに注目されるようになった。

1990年代には周辺地域とともに再開発が進み、2002年に複合施設「横浜赤レンガ倉庫」へと生まれ変わった。入居しているのは、コスメやアクセサリー、ファッション、輸入雑貨などを扱うおしゃれな店舗である。

gandhi / PIXTA

そんななか「和カフェ」の文字を見つけ、2号館3階の「chano‐ma」で休息をとる。この店は壁のレンガ、天井の鉄骨や配管をむき出しにして、あえて倉庫らしさを演出していた。壁ぎわの「ベッド席」がユニークで、客たちはクッションにもたれ、足を投げ出してくつろいでいる。「黒蜜ときなこのパフェ」を注文し、ほど良い甘さで街歩きの疲れを癒した。

赤レンガ倉庫前から15時57分発のバスで帰途に就く。「あかいくつ」は、開港以来の歴史と文化のなかで、〝新しいヨコハマ〟にも出合える、楽しい時間が過ごせるバスだった。

加藤 佳一 BJエディターズ編集長

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かとう よしかず

1963年東京都生まれ。東京写真専門学校卒業。1986年にバス専門誌『バスジャパン』を創刊。1993年から「BJハンドブックシリーズ」の刊行を続け、バスに関する図書を多数監修。著書に『つばめマークのバスが行く』『そうだったのか、都バス』(ともに交通新聞社新書)、『路線バス 終点の情景』(クラッセ)、『都バスで行く東京散歩』『一日乗車券で出かける東京バス散歩』『ローカル路線バス 終点への旅』(以上、洋泉社新書)などがある。

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