テスラの練り上げられた作戦に脱帽してしまう訳 EVの販売台数を数えているだけでは真価を見誤る

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(3)については、テスラは世界中を走るテスラ車から走行データを収集し、自動運転機能「オートパイロット」を進化させています。ここには従来のガソリン車とは違うIT業界のものづくりに近い手法が取り入れられています。

テスラの車は、スマホのようにソフトウェアの「アップデート」によって進化していくのが特徴で、オートパイロット機能も、そのようなソフトウェアの1つです。現在発売されているテスラ車はすべて完全自動運転を見越したハードウェアとなっており、あとはオートパイロットのアップデートと、完全自動運転が公道で許可されるのを待つばかりとなっています。

筆者は、イーロンが「マスタープラン」と「マスタープラン・パート2」を実現させてきたことに、驚嘆しないではいられません。イーロンが「マスタープラン」を掲げた頃には、「EVの収益化や量産化などはるか先の話」と笑われたものです。

EVに目が奪われがちだが…

ところが2020年、テスラはついに収益化・量産化に目処をつけました。脱炭素、EVシフトという世界的な追い風が吹き、念願の黒字化も果たしました。投資家の注目が集まるのは、当然のことであるようにも思います。

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EVに目が奪われがちですが、自動車の新しいコンセプトであるCASE全体を推進していることも見逃すわけにはいきません。自動化とEV化は両輪ですし、ソフトウェアがアップデートされ、既存のテスラ車が完全自動運転車に切り替わるというシステムは先進的です。EVのみならず、完全自動運転でもテスラが先駆者になる可能性は小さくありません。

もちろん、トヨタをはじめとして、既存の自動車メーカーがこのままやすやすとテスラの独走を許すことはないでしょう。しかし、テスラが引き続き、多くの話題を提供し、マーケットに影響を及ぼす会社であることは確かです。

そして、「クリーンエネルギーを創る、蓄える、使う」という三位一体事業は堅牢です。テスラのグランドデザインは早晩、「世界のグランドデザイン」になるでしょう。イーロンの強い使命感と、壮大なビジョン、そしてビジョンを形にしてきた実行力を見れば、私のみならず、多くの人がそう予感するのではないでしょうか。

田中 道昭 立教大学ビジネススクール教授

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たなか みちあき / Michiaki Tanaka

シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略およびミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)などを経て、現在は株式会社マージングポイント代表取締役社長。主な著書に『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)など。

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