テスラの練り上げられた作戦に脱帽してしまう訳 EVの販売台数を数えているだけでは真価を見誤る

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プロモーション(Promotion)は、イーロン自身が行っているようなものです。マス広告を打たず、イーロン自らがSNSから情報を発信します。ピープル(People)の点ではイーロンの理念とビジョンに共感する優秀なスタッフを集めていること、フィジカルエビデンス(Physical Evidence)の点では直営店や専用の充電ステーション「スーパーチャージャー」を整備していること、プロセス(Process)の点では、SNSによる事前告知→受注→生産方式であることなどに特徴があると言えます。

マスタープラン・パート2から読み解くテスラの現在地

「マスタープラン」をほぼ実現させたイーロンが、2016年に新たに掲げたのが「マスタープラン・パート2」です。

ここでもイーロンは戦略を4点に要約しています。

(1)バッテリーストレージとシームレスに統合されたソーラールーフを作る
(2)すべての主要セグメントをカバーできるようEVの製品ラインナップを拡大
(3) 世界中のテスラ車の実走行から学び、人が運転するより10倍安全な自動運転機能を開発
(4)クルマを使っていない間、そのクルマでオーナーが収入を得られるようにする

2021年現在のテスラは、この計画をどこまで実現させているのでしょうか。計画の進捗を追いかけてみましょう。

(1)については、2016年に太陽光発電のソーラーシティを買収・合併したことに関連しています。例えば、太陽光パネルと屋根用タイルが一体となった「ソーラールーフ」や、家庭用蓄電システム「パワーウォール」を発売し、パナソニックと共同経営する工場「ギガファクトリー」ではEVに搭載するリチウムイオン電池を生産しています。こうして、クリーンエネルギーを「創る」と「蓄える」をシームレスに統合し、クリーンエネルギーのエコシステムを構築するために一元管理しているのです。

(2)のEVのラインナップ拡大も順調に見えます。2017年にはロードスターの2代目を発表しました。その開発状況は不明ですが、2021年中の発売も噂されています。2019年には大衆SUV「モデルY」を発表し、2020年3月から納車が始まっています。2017年には輸送用トラック「テスラ セミ」、2019年にはトラックの耐久性にスポーツカーの運動性を兼ね備えたピックアップトラック「サイバートラック」を発表しました。サイバートラックは未来的で奇抜なフォルムでも話題をさらいました。

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