コロナ治癒に「うつ伏せが有効」という意外な事実 重症だけでなく中等症でも呼吸機能改善の例も

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検討した期間は昨年4~10月。同院の感染症病棟に入院した中等度Ⅱの患者のうち、医師が腹臥位療法の適応があると判断し、かつ腹臥位療法に同意した23人を観察した。

腹臥位療法は7時間以上のうつ伏せが必要だが、対象者は自分で食事をとったり、トイレに行ったりできる患者で、長時間にわたるうつ伏せは難しい。そこで、うつ伏せになるのは午前中2時間と午後2時間にし、残りは毎食後に1時間ほどテーブルの突っ伏した状態でいてもらった。

その結果、23人全例で肺が酸素を取り込む能力が改善し、呼吸回数も8割で正常化した。人工呼吸器を装着した例はなく、医師が「腹臥位療法によって人工呼吸器の使用を防げた」とした患者は2人だった。

「ベッドにはモニターがあるので、うつ伏せになると数値が改善することが一目でわかる。それで患者さんも『もう少し頑張ってみよう』という気になってくれたようです」(大利さんと一緒に腹臥位療法の検討にあたった看護師、有馬美奈さん)

うつ伏せでコロナ重症化が防げる可能性はある

自力でうつ伏せになれる中等症患者への腹臥位療法は、眠らせた状態で人工呼吸器を使っている重症の患者とは違って、看護師の労力はそれほどいらない。

「代わりに、意識のある患者さんに2時間うつ伏せでいてもらうためのケアは必要でした。首の位置や手の位置を少しずつ変えながら、苦痛ができるだけ生じない格好を患者さんと一緒に探し、それでもつらいことや苦しいことが出てきたらすぐに対応しました」(同)

前出の藤野さんも、中等症患者に対する腹臥位療法にも期待を寄せる。

「人工呼吸器を使うほど重症化しておらず、自分で座ったり歩けたりするような患者さんの肺では、潰れていない肺胞が多く残っています。ですので、従来考えられてきたメカニズムからしたら、腹臥位療法の効果はあまりないかもしれません。しかし、ウイルスは潰れた肺胞で増殖しやすいという仮説もあり、腹臥位で新型コロナの重症化が防げる可能性はあります」

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都立駒込病院では現在、100床以上をコロナ病床にし、多くの看護師が新型コロナ患者の対応にあたり、腹臥位療法も積極的に取り入れている。

「ICUの病床も人工呼吸器の数も限られているなか、中等症の新型コロナ患者さんを重症化させないことは、医療現場の負担を減らすことにもつながると思います」(有馬さん)

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