鉄道会社の「手荷物検査」、現実には高いハードル 省令改正で「拒否なら強制退去」も運用には課題

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しかし、鉄道運輸規程が定めるペナルティーはこれにとどまらない。鉄道営業法上の刑罰規定に該当する場合にはその刑罰(同法第35条)を受ける可能性があるほか、

①旅客が有していた乗車券の区間に相当する荷物運賃と10倍以内の割増運賃を請求できる。ただし、有効な乗車券を持っていなかった場合には乗車列車の運転区間の運賃の10倍以内の割増運賃を請求できる
②危険物については1kgあたり1000円以内の割増運賃を請求できる
③損害が発生している場合にはさらに損害賠償請求をすることもできる

という3段重ねが用意されている(鉄道運輸規程第24条第3項、第4項)。なお、②の「kg」は、条文上「瓩」と漢字で記されている。恥ずかしながら条文を見たとき、何と読むのかわからず初めて「kg」の漢字表記であると知った。

これを受けて、たとえばJR東日本の旅客営業規則第312条でも同様の規定が用意されている。ただし、②に関連した規定では、火薬類はkgあたり1000円、その他の危険品はkgあたり300円とされている。

手荷物検査のルールを明文化

しかし、冒頭に述べた地下鉄サリン事件では猛毒のサリンが、東海道新幹線での焼身自殺事件ではガソリンが、列車内に持ち込まれた。法令で禁止していても、実効性を担保する手段・制度が整っていなかった、というのが危険物の持ち込みを排除できなかった理由の1つであろう。

そのため今般、国交省は安全な鉄道輸送を確保するために手荷物等の点検のための規定を法令の中に盛り込み、鉄道事業者が必要な点検を適切に実施できる環境を整備することにした。

6月8日に公布した鉄道運輸規程の一部を改正する省令によれば、鉄道運輸規程に新たに第25条の2を設け、携帯品の点検についての規定を定めた。なお、原文は漢字カタカナ表記で堅苦しい言葉遣いになっているが、読みやすくして紹介する。

①鉄道係員は、旅客が第23条第1項第1号から第3号に掲げる物品を客車内に持ち込むこと、その他危害を他に及ぼすおそれのある行為を防止するために特に必要があると認めるときは、旅客または公衆の立会いのもとで携帯する物品を点検することができる。この場合には旅客または公衆に対しその点検に必要な協力を求めることができる(第25条の2第1項)
②旅客または公衆が前項の点検または協力の要求を拒否した場合には、鉄道係員は、その旅客または公衆に対し、車外または鉄道地外に退去することを求めることができる(第25条の2第2項)
次ページ実際の運用はどうなる?
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