「経営者の報酬」を減らして最低賃金を引き上げよ 衝撃!「中小企業の労働分配率80%」に潜む欺瞞

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

アメリカでも、中小企業へのダメージが大きいということを理由に、商工会議所が引き上げの中止を訴えました。

商工会議所というのは、中小企業の従業員の代表ではなく、中小企業の経営者の団体なので、最低賃金の引き上げには必ず反対します。彼らにしてみれば当然の行動です。

最低賃金の引き上げというのは、労働分配率の引き上げになります。つまり、資本家から労働者への利益の移転です。ですので、資本家の団体である商工会議所は最低賃金の引き上げには毎回反対するのです。これは今に始まった反応ではなく、大昔からまったく変わっていません。

しかし、海外諸国の政府は、総合的な判断の結果、資本家の利益より労働者の利益に重きを置いて、最低賃金の引き上げに踏み切ったのです。

各国政府がこのように決断した理由の1つが、コロナによる負の影響が特定の業種に集中していることにあります。特に宿泊・飲食・娯楽業界に大きな影響が出ました。それ以外の業種でも影響がまったくなかったわけではありませんが、先の3業種に比べるとかなり軽微です。

一部の中小企業が大きなダメージを受けていることを理由に、利益が増えたり、それほど変わっていなかったりする大半の中小企業の最低賃金まで据え置きにすることは、合成の誤謬です。諸外国ではそう判断し、最低賃金の引き上げを決定しました。特に、ワクチンが普及すると、この3業種では確実に需要が大きく回復します。この3業種は別途、観光を支える政策などで守ることにし、経済全体のために最低賃金を引き上げたのです。

日本でも、コロナによる負の影響がもっとも大きかった宿泊・飲食の従事者は、全雇用者の7.7%です。これらの業種は生産性が最も低いので、国全体の付加価値の2.6%しか創出していません。業種を生活関連まで広げても、雇用の11.5%、付加価値の4.5%にすぎません。

経済政策を考えるのにあたって、日本経済の付加価値の2.6%から4.5%しか創出していない業種が大変だからといって、すべての業種の最低賃金の引き上げを凍結するのは、あまりにも理屈の合わない話です。

日本が次に最低賃金を引き上げるタイミングである今年の10月は、ほぼ全国民のワクチン接種が終了する時期に近いので、先の3業種はGoToキャンペーンなどを展開して、ピンポイントで支援するべきなのです。

「最低賃金を引き上げると失業率が上がる」という神話

しかし、今年もまた「最低賃金を引き上げると、失業率が上がる」という反論がやむ気配がありません。先ほども説明したとおり、昨年は雇用維持のためだという主張で最低賃金の据え置きが訴えられ、ほぼその通りになりました。確かに、雇用を維持したままで、これから最低賃金を引き上げるのであれば、負担は重くなります。

では、最低賃金をほぼ据え置いたことで、雇用は守られたのでしょうか。実は、先ほどの3業種を中心に、すでに約100万人の雇用が減っています。大半は女性の非正規社員で、最低賃金で雇われていた人たちです。

最低賃金で雇われていた人たちの雇用は、すでにかなりの程度失われているのです。ですから、今後最低賃金を引き上げても、これら3業種への負担はその分だけ軽くなっています。つまり、最低賃金を引き上げたら雇用を減らさざるをえなくなるという意見は、ファクトを確認していない概念論でしかないのです。

すぐには元の状態に戻らないかもしれませんが、宿泊・飲食・娯楽業界の需要は確実に増えます。お酒が飲めるようになれば、外食の機会が増えますし、結婚式などのイベントも増えることでしょう。感染予防のため控えられていた出張は増えるでしょうし、国内観光も今より増えることは確実です。

これらの3業種が回復すれば、コロナ禍で減らしてしまった非正規労働者を増やさなければなりませんので、雇用が大きく増えることが想定されます。要するに、10月の最低賃金の引き上げは、雇用を減らす効果はなく、雇用の増加を少し抑える程度にとどまるはずです。

次ページ「デフレを脱却してから」「生産性を上げてから」では遅い
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事