3カ月待ち「パンのサブスク」人々が熱狂する理由 「どこのパンが届くかわからない」のに人気沸騰

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この特別な袋に矢野社長が出合ったのは、ある意味偶然だ。「最初はオフィス向けのビジネスでスタートしたので、パンメーカーさんに製造を依頼しました。通常の製造ラインと異なるため、個包装をしていただく必要が生じ、新たな包装資材を探したんです。高級オーダーメイドのパン、というコンセプトに合う袋を探したところ、別の高級食材用に使われていたこの袋を見つけました」と矢野社長。

しかし、実は袋の真価を知ったのは、しばらく経ってからだった。パンの製造を始めて1カ月ほど経った2018年6,7月頃、味が落ちない、とわかったのだ。そこで検査をしたところ、先のような品質の高さを知ったのだ。

全国のパン屋から契約の申し出が殺到

2019年3月に、『がっちりマンデー!!』(TBS系)で紹介されると、全国のパン屋から契約の申し出があったため、取引先を全国に広げた。合わせて、個人からも「食べたい」と言われるようになって個人向けのサービスを準備し始めたのである。

パン屋からも多くのラブコールがあるパンフォーユーだが、その審査のハードルは高い。店側もしくはパンフォーユーからアプローチし、パンを指定の袋に入れて冷凍で送り、矢野社長ら約6人のメンバーが試食。「冷凍でも品質が安定しているか、また食べたくなるか、他の人にすすめたくなるか」などの視点で検討した結果、契約が決まる。

パンスクがもう1つ大事にしているのがセレンディピティ(偶然の幸運)、つまり見知らぬパンとの出会いである。サプライズの形でパンが届くようにしたのは、オフィス向けで手応えがあったからだ。パンを届けると、「今度はどんなパンが入っているのかな?」と皆が集まってくる。わからないことがかえって、ワクワク感と楽しみを生むことに気づく。また、名の知られていないパン屋でも、品質が高い店があることも知ってもらいたかった。

矢野社長には、「パン生地自体の魅力をきちんと知ってもらい、パンの価値を上げたい」という思いもあった。実は、日本で人気の具材を挟んだりトッピングした菓子パン・総菜パンは必ずしも冷凍に向いていないため、どちらかといえば生地で勝負するフランスパンやドイツパン、食パンなどが選ばれる傾向があることも、生地自体がおいしいパンを送ることに結びついている。

「パンは日用品と思われがちなんですが、嗜好品に近いと私は思っています。ジャパニーズ・ウィスキーの価値が上がっているように、こんなにおいしいならパンに500円、1000円払ってもいい、という人が現れてくるのではないか」と矢野社長は話す。

一方、参加するパン屋にとってパンスクは魅力的な取引なのか。契約先のパン屋にも話を聞いた。

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