3カ月待ち「パンのサブスク」人々が熱狂する理由 「どこのパンが届くかわからない」のに人気沸騰

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もともと群馬県出身の矢野社長は2011年に電通に就職したが、2014年に退職し、地元の桐生市にUターン。NPO勤務などを経て2017年にパンフォーユーを設立した。

その動機を矢野社長は、「地方と都市部の教育格差を埋めたい、と考えたからです。そのためには、地域の活気と新しい仕事が必要。気候や水質に左右されるなど、地域の必然性が生まれる商材と言えば、食品です。その中でもパンは市場が伸びており、トレンドの変化にもすばやく対応できる。パンで、新しい地域経済圏を作ろうと考えました」と話す。

冷凍パンメーカーのパンに衝撃を受けた

矢野社長がパンに注目した最初のきっかけは、25、6歳の頃、仕事で桐生の冷凍パンメーカーのパンを食べたこと。「おいしいパンって、あるんだ」と感動すると同時に、冷凍すればどこへでも送れ、賞味期限も長くできるパンの可能性に気がついた。

違う地域で暮らした経験がある矢野社長は、桐生のパン屋のパ品質は高いと感じていた。何しろ群馬県には、日清製粉創業の地の館林市があり、おっきりこみ、水沢うどんといったうどんの名物もある小麦の一大産地である。地元群馬を盛り上げるのに、パンは最適なのではないかと考えたのだ。

「おいしいパンを作ることができれば、地元に根ざして生活できる。コロナ禍のテレワークの浸透で崩れつつあるものの、現状ではまだ、給料がいい仕事ほど都市部にあります。パンは商圏の人口によって売り上げが左右される商売ですが、冷凍パンの販売によって全国に配送できれば、売り上げの天井の高さを上げ、収入を増やせるのではないか」と矢野社長は言う。

東京で勤務した後、故郷の桐生市に戻った矢野社長(写真:東洋経済オンライン編集部撮影)

だが、設立当初はパン屋を巻き込むのに苦労した。

2018年5月頃からまず、仕入れ担当の社員が桐生市周辺のパン屋に足しげく通って契約を依頼したが、「おいしいものの選択肢がたくさんある東京の人が、うちのパンをおいしいと思ってくれるのか?」「冷凍して味が落ちないのか?」などと警戒されたのだ。しかし矢野社長は、自分がそうだったように、東京のオフィスワーカーにもおいしいパンを食べたことがない人はたくさんいるはず、と見込んでいた。

「試験的に東京へ送ったところ、届けた先の方が『こんなおいしいパンは食べたことがない』と言ってくださいました。そして桐生のベーカリーさんに『東京の人たちに喜んでもらって、先日卸していただいたパンもすぐに売り切れました』と言って、ようやく契約してもらえるようになったんです」と語る矢野社長。

実はこの時、威力を発揮したのが、パンスク独自の冷凍技術と包装用の袋である。現在は、冷凍方法について国際特許を出願中で、くわしいプロセスと包装用の袋の詳細は聞けなかったが、一般社団法人日本食品分析センターの検査によると、この袋を使うと、1カ月の賞味期限中デンプンの老化が抑えられ、パンの食感を維持できる。焼きたての状態で冷凍プロセスに入るため、常温で1日置いたものより品質が高いことが実証されている。

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