不満や苦情解消、鉄道会社のSNS「ウマい使い方」 迅速な情報提供が命、工夫次第で効果は絶大

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えちごトキめき鉄道の公式サイトは必要最低限の情報にとどめた。SNSアカウントは販促用のみで運行情報はなし。そのかわり、社長の鳥塚氏が直接発信した。個人アカウントのフェイスブック、ブログ、ヤフーニュース個人のチャンネルをすべて使った。会社としての公式発表は正確に控えめに。その隙間を保管する役回りが社長の発信ということだろうか。

「毎年、雪による輸送障害が発生しますので、降雪状況や除雪作業の進捗度合いを踏まえ、ホームページで運休情報などを適宜発信しています。また、報道機関・地域の行政機関、学校などへ直接、運休や運行再開見込みなどの情報を提供しています」(えちごトキめき鉄道の北嶋宏海常務)。

「鉄道会社に『隠す』という意図はないのですが、余計なことは発表しない傾向があると思います。逆に言うと、はっきり決まったこと以外は伝えないという考えです。今の時代、その部分が逆に不信感を招くことがあると思います」(鳥塚氏)

公式サイトと社長サイトの二人三脚

鳥塚氏は公募により2019年9月に着任した。自治体出資の第三セクター会社の方針を尊重しつつ、できるところから着手していくという方針のようだ。

えちごトキめき鉄道の鳥塚社長(撮影:尾形文繁)

彼は前任地のいすみ鉄道社長時代からブログを開設し、歯に衣着せぬ発言で話題になっていた。その発信力も買われてえちごトキめき鉄道の社長になった。総務部が公式見解を提供する一方、鳥塚社長に関心を持つ人は鳥塚氏の「非公式なリアルタイム情報」で復旧見通し情報を得られる。

このスタイルは地元メディアにとって便利だ。公式サイトで堅実な復旧見通しを得つつ、鳥塚氏のブログなどで、その情報の背景を理解できる。読者に対しては公式情報を伝えつつ、鳥塚氏の見解を補足できる。しかもブログだから、いちいちインタビューしなくても参照できる。迅速な報道につながる。

鳥塚氏の発信は、SNS、ブログのほかに、ヤフーニュース個人のアカウントでも実施された。最大手ポータルサイトだから伝播力は大きい。乗客への「取材」も実施し「家から車が出せない。ふだんは車だけど電車が走ってくれてありがたい」という声を紹介している。もともと降雪が少ないと言われた地域の大雪だから、沿線の人々も受験生同様に不安だったようだ。公式サイトでは文字情報だけだけれども、社長ブログの写真で現況がひと目でわかる。

えちごトキめき鉄道の除雪について、JR東日本が除雪を支援している。これも発信の効果だろうか。

「弊社の窮状を見かねて、JR東日本さまから応援の申し出をいただき、ご支援をいただきました」(北嶋氏)

JR東日本が「窮状」を知った理由は鳥塚氏の発信というより、現場の職員同士の連携だったようだ。

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