人を死に追い込む「ことば」と感染症の怖い共通点 ノーベル賞作家・カミュの「ペスト」を読み解く

カミュ著「ペスト」はフィクションだが…
2020年、「新型コロナウイルス」がやって来て、多くの人たちの生活が変わった。ぼくの生活も、もちろん。
その中で、一冊の本が、広く、深く、読まれた。アルベール・カミュの『ペスト』である。広く読まれた理由は、もちろん、「ペスト」が、「新型コロナウイルス」と同じ、世界規模の感染症だったからだ。しかし、深く読まれた理由は、異なっているし、明確でもない。そもそも、カミュの『ペスト』は、ドキュメンタリーではなく、フィクションだったのだ。
ぼくにとっても驚きは大きかった。読み返すのは、ほぼ半世紀ぶりだった。最初に読んだ頃には、「ぺスト」とは、この小説が書かれる直前に終わった「第二次世界大戦」、「戦争」の比喩である、そう読むのがふつうだった。
しかし、今回は、もっと別の箇所が、目覚ましく浮かび上がってくるのを感じた。おそらく、著者がもっとも読んでもらいたかったのは、この箇所だったのだ、と思えた。
登場人物のひとりタルーが、主人公の医師リウーに、こう告げるシーンだ。
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