開発現場で多発する鬱病、社長陣頭指揮が示した意義
就業規則の8割を変更 本社も便利な都心に移転
早速社員にアンケートを取り、「働かせる環境、管理する規制」ではなく、「働きやすい環境、働きやすくする規則」という視点で就業規則が作り直された。
勤務時間は選択制とし、7時間・6時間勤務も選べる。理由は問わない。服装規定は社員検討委員会で決め、カジュアルに近いものにした。賃金規定では経験給を復活させ、在籍年数に応じて昇級し、定年退職金も増額(自己都合退職は減額)した。
昇格試験・昇格ルールも見直した。従来の上司による査定から、“人間力”や周囲の評価を重視し、職場の同僚・他部署からのアンケートや、改善提案作成とそのプレゼンテーション、コミュニケーション力も昇格条件に取り入れた。無意味な競争意識を排除、意欲向上の足かせを取り除くという意味で、これまであった26歳までの昇格・昇給横並び制を撤廃、抜擢制限はなくした。
人事評価もガラス張りにし、育成に力点を置いた制度へ切り替えた。売り上げではなく、360度評価で「満足度」や「技術力」などを評価。親会社であり取引先でもあるオリンパス社員へのアンケートも実施している。特に管理職については、働きやすい環境をつくることを目的に、パワハラやセクハラの撲滅はもちろん、部門内でのコミュニケーションが活性化するよう、部下から毎年“採点”される制度も設けた。
「上司は部下と仕事のことだけでなく、仕事以外のことも話すことで、多面的に理解していくことが大切。いちばん大事なのは、普段の何げないコミュニケーション。それが社員の不安やストレス解消につながる」(天野社長)という。
また社内ポータルを導入、全社共有のコミュニティサイトを通して、情報を共有できるようにした。誰に何を相談すればいいのかという社員の不安感を解消し、部門を越えて困ったときに助け合える連帯感や、業務以外での相談ができる相手を探せるなど、社員に孤独を感じさせないような中身になっている。