開発現場で多発する鬱病、社長陣頭指揮が示した意義

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開発現場で多発する鬱病、社長陣頭指揮が示した意義

鬱病対策は会社経営の最重要課題--。社員のメンタルケアのために、本社を移転、就業規則や賃金・退職金規定、昇格ルールに評価制度まで変えた会社がある。

オリンパスグループの中でソフト開発を担当するオリンパスソフトウエアテクノロジー(以下、OST)という会社だ。仕事の100%がオリンパス向け。デジタル化の潮流の中で製品開発に占めるソフト開発比率が向上、それに伴いOSTの仕事量も増えている。今や従業員約550名を抱える、オリンパスグループの中核企業に上り詰めた。

しかし、ここ数年、経営者を悩ませ続けてきたのが、退職者・休職者の急増だった。ソフトウエア開発は急激な規模の拡大と複雑化の中で、開発現場が混乱。ミスの多発、納期遅延、コスト超過などが発生し、開発中止という事態も起こった。2005年には退職者は7%を超え、休職者は07年に全体の5%にまで達した。その原因のほとんどが、鬱病などの「メンタルシック」だった。

職場環境や古い企業文化 変えていくことが改善に

退職者・休職者の増加は“人材が命”のソフト開発にとって、大きな利益損失をもたらす。OSTの試算によれば、休職者が10名出た場合、年間で約1億円の純損失が発生するが、これは単純計算した数字。「過去から積み上げてきた社員個人の有形無形の資産価値、教育などにかけた時間やコストを考えれば、損失は計り知れない」と天野常彦社長は話す。同時に個人の仕事への意欲低下、会社に対する不信感となり、技術そのものの喪失へとつながる。

「これではいけない、原因は何なのか」。天野社長は06年に社長就任するや、この問題に真正面から向き合った。まずは、現場の社員全員にヒアリングを開始。1回5~6人で1時間半程度、自分のストレス、困っている問題、会社への疑問・不満などぶちまけてもらう。もちろん業績評価には一切反映させない。社長が全社員とフリーディスカッションするこの行事は、年1回の恒例としてすっかり定着した。

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