日本の家づくりに暗雲「ウッドショック」の危機 コロナ禍が引き金となり、長期化が懸念される

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もう1つの要因であるコンテナ不足は、コロナ禍によりeコマース(インターネット通販)向け商品などの需要が増加したことで、世界的に物流量が拡大したことが背景にある。

下記【図1】は、国土交通省が4月23日に実施したコンテナ不足問題に関する情報共有会合の資料だ。

【図1】米国向けコンテナ荷動き量はコロナの影響により低迷していたが、2020年後半は急速に回復している(国土交通省の資料より引用)

日本を含むアジアからアメリカへのコンテナ荷動き量が増え、運賃が上昇していることがわかる。さらに、中国におけるコンテナ製造の停滞、北米西海岸の港湾混雑(荷積み・荷揚げが停滞)も要因となり、木材輸入の困難さに輪をかけているわけだ。

木材の輸送に用いられるコンテナのイメージ(筆者撮影)

では、木材の輸入と価格はどうなっているのだろうか。中でも調達が難しくなっているのが、主に北米や欧州などから輸入する「製材」と「集成材」である。

製材とは伐採した木を角材や板材に加工したもの。集成材はある一定の大きさの木材を集めて接着、加工したものだ。

【図2】は、林野庁木材貿易対策室による「木材輸入の状況について」から引用した、「製材」についての昨年の輸入量を表したものだ。6月以外、前年同月を下回る状況が続いている様子が見て取れる。

【図2】製材の輸入量は2020年夏以降、大幅な減が続いていた(林野庁木材貿易対策室の資料より引用)

図にはないが、今年1月が前年同月比マイナス29%、2月が同4%、3月が同7%となっている。このほか、「集成材」も同様で、昨年10月以降減少が続き、今年も1月が同29%、2月が同21%、同11%となっている。

アメリカで製材などが史上最高値を更新

この結果、「アメリカの製材、構造用パネルは史上最高値を推移中」(日本木材総合情報センター)で、ランダムレングス紙発表の15種平均価格については昨年4月の$358/Mが、今年4月には$1026/Mと約3倍となっている。

これに伴い、国産材も値上がりしている。【図3】は農林水産省大臣官房統計部が5月6日に発表した木材流通統計調査によるものだが、例えば「すぎ中丸太」は昨年7月以降、価格が上昇し続けている。

【図3】すぎ中丸太の価格の推移(農林水産省大臣官房統計部の資料より引用)

以上のことからも、今後の推移がどうなるかが焦点となるわけだが、前述したように先行きについては、悲観的になっている業界関係者もいる。そこで、今後について木材を取り扱う代表的な2社による見解を求めてみた。まずは住友林業で、文書による回答を得た。

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