レオパレスが債務超過転落、再建へ「2つの不安」 賃料減額は波乱含み、収益計画もガラス細工

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レオパレスが収益改善を進めるうえでの不安要因は大きく2つある。

1つはオーナーに保証している賃料の減額だ。施工不備問題を受け、2019年4月から賃料の更新・減額交渉を凍結していたが、直近の賃料相場などを反映して2020年12月から交渉を再開し、2021年4月から実際に賃料を減額し始めている。

この賃料減額交渉はレオパレスの経営にとって、新たな波乱要因になっている。

一方的な減額通知にオーナーの反発

今から2005年、西日本のあるオーナーは「当社のオリジナル商品では周辺相場より高い賃料が取れる。保証賃料も高く支払える」と説明を受けてアパートを建てた。4月中旬にレオパレスから賃料減額の申し入れを内容証明郵便で受け、合意書を送付しなかったところ、1週間後に内容証明郵便で「借地借家法32条1項に基づく減額請求権を行使する」との通知が再度送られてきた。裁判で賃料減額が認められた場合、これまでの賃料との差額と「差額に年率10%を加算した額を当社にお支払いいただく」という。

このオーナーは、「レオパレスに協議などする気配はなく、一方的に減額するといわんばかり」と憤る。

この点、レオパレスの竹倉経営企画部長は「客観的な鑑定価格に基づいて交渉を行っていて、全体の8割のオーナーからは減額の同意をもらえる見通しだ。不同意の2割のオーナーとは調停になっても妥協はしない」と言う。こうした賃料減額などで2022年3月期は136億円の費用を削減できるとしているが、不同意のオーナーとの交渉がすんなり進むのかは不透明だ。

2つめは、目論見通りに収益を伸ばせるとは限らないことだ。レオパレスは今後の営業方針を、「新規顧客の獲得」から「既存顧客との入居契約拡大」に転換している。首都圏の得意先企業328社に的を絞り、トップ営業をかけるほか、改修後の安全性などをアピール。施工不備問題で減少した契約戸数の回復に取り組む。さらに、全国を7地域に分けて各地に「エリアCEO(最高経営責任者)」を配置して権限を与え、入居率や収益改善への責任を持たせるという。

一方、これまで自前でやっていた個人客の入居斡旋を、フォートレスのネットワークを生かして仲介業者を介した方式に改める。レオパレスは仲介業者を活用することで効率性が上がると説明しているが、その分費用がかかるため、自前での入居斡旋よりも利益率が下がることになる。

部屋に配置する家電製品はこれまで一定期間が経過すると新品に交換していたが、使えるものは清掃して使うなど運用を見直す。宅地建物取引士の資格保有者に一律支給していた手当も、今後は原則支給しない方針だ。こうした爪に火をともすような施策で、2022年3月期の原価を360億円、人件費を26億円削減する計画だ。

【2021年5月31日12時45分追記】初出時の表記を一部修正いたします。

これらの収益計画は、入居率の回復を含め、すべてが順調に進むことが前提のガラス細工のような内容だ。上場廃止が猶予されているうちに本業を立て直せるのか。予断を許さない状況が続きそうだ。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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