リニア開業を2年延期したJR東海、その隠された真意とは
3月の国土交通省交通政策審議会。リニア中央新幹線の営業・建設主体を決める舞台だ。「交通の歴史に新たな1ページを記す日になる」。会議の冒頭、三日月大造政務官はそうあいさつした。
リニアに対して、政界はオール与党。「建設は自分たちで」と公言したJR東海の独走を懸念した国交省も、今は「粛々と進めるだけ」(関係者)と静観する。だが、JR東海にも誤算が生じた。2007年度水準の業績が続くことを前提で25年開業に設定したが、急速な景気悪化で新幹線乗客が減少したのだ。
そこで運輸収入を06~10年度の平均値に見直し建設期間を再計算した結果、開業は2年遅れに。「資料を見直したら27年だった。それだけの話」と、JR東海の山田佳臣社長は淡々と語る。だが、その2年が持つ意味は大きかったはずだ。
3月の審議会では、事業の採算性など計画を“詳細に”吟味していく雰囲気だった。こうした中、4月末に突如2年延期を発表。今月10日の審議会では「委員はJR東海のリニア計画をほぼ了解したような感じだった」(国交省関係者)。
JR東海は、審議長期化を避けるため、ある程度の“代償”を払い、審議会の空気を変えるべきと考えたのか。開業は15年後の話。そんな先の話から、わずか数年の延期程度で自らに有利な雰囲気をつくれたのなら、JR東海の作戦勝ちといえるだろう。