「ひょうたんで食中毒」事件のお粗末な全容 観賞用の苗をなぜ食用の表記で販売したのか

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生産者は昨年、このシリーズ商品を開発するに当たり、ひょうたんは食べられないと認識していた。ところが、「育てて楽しい、食べておいしい」とネーミングを考えた際、確認ミスでひょうたんを商品から外しそこねてしまったという。何ともお粗末な印象が否めない。

ロイヤルホームセンターは、症状を引き起こした顧客の状況を確認したうえで、直ちに奈良市保健所へ連絡。また、HPや複数の全国紙、有力地方紙を通じた告知なども遅滞なく実施している。生産者も自社のHPで、お詫びなどを「重要なお知らせ」として目立つよう掲載した。

有効な手が打てない行政

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ひょうたん苗には、このようなラベルが付けられていた

一方、奈良市は、関係する郡山保健所への連絡などは行ったものの、「通常、食品として流通しているものではないので、食品衛生法に基づいて、回収や破棄といった指導はできない」(生活衛生課)と説明している。

消費者庁にも問い合わせてみたところ、同庁のHP上の「回収・無償修理等リコール情報サイト」への掲載は行ったという。ただ、今回のように食用でないひょうたんの“苗”のラベルに「食用」と書いた場合は、「法律上の罰則ということでは、(食品の安全性にかかる)食品衛生法、(飲食料品などの一定の品質を保証する)JAS法のどれにも当てはまらない」(消費者安全課)。

むろん、同庁では、食品衛生法などの網から漏れるケースに備え、消費者の被害を防止し、安全を確保するため、「消費者安全法」に沿った対応を行っている。ところが今回のケースは、同法の施行令が定める「重大事故等」(=死亡や治療期間が30日以上)には該当しない。それゆえ、消費者庁もHPにおける警告以上の対策が打てていない。

確かにひょうたんは通常、食品として流通しているものではない。ただ、「食べておいしい」という表記があれば、食べられることを疑う人はいないだろう。天然自然毒素を専門とする富山大学和漢医薬学総合研究所の紺野勝弘客員教授は「ひょうたんの毒は中程度の毒性で、いわゆる猛毒ではないが注意は必要」と指摘する。行政から再発防止などに向けた、きちんとした指導がなかったというのも、腑に落ちないところではある。

水落 隆博 東洋経済 記者

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みずおち たかひろ / Takahiro Mizuochi

地銀、ノンバンク、リース業界などを担当

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