異業種が続々と参入、中国「EV市場」に渦巻く野望 鴻海や百度、ファーウェイなどが参入を表明

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2010年代、「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」に対抗して中国のバイドゥ、アリババグループ、テンセント(騰訊)は「BAT」と呼ばれるようになった。

しかしECやメッセージアプリ、モバイル決済アプリで巨大なユーザー基盤をつくりあげたアリババ、テンセントに対し、検索一本足打法だったバイドゥはスマホシフトに乗れず失速。今では「BATのBは(TikTokを運営する)バイトダンス」と言われるありさまだ。

それゆえにバイドゥは2010年代半ば、大規模な構造改革に着手した。人工知能(AI)と自動運転技術に投資を続け、2017年に自動運転車オペレーションシステム「Apollo1.0」をリリース、2019年には完全自動運転のタクシー「Apollo Robotaxi」の試験運行を始めた。

バイドゥも吉利と合弁会社を設立

自動運転タクシーはコロナ禍の感染症対策としても評価され、2020年には一般消費者がアプリでタクシーを配車できる段階まで進展している。アリババ、テンセントも自動車メーカーと提携しているが、自社技術の実装ではバイドゥが大きくリードする。

そのバイドゥも今年1月、吉利と合弁会社を設立し、自動運転技術を搭載したEVの製造販売に乗り出すと発表した。新会社「集度汽車」の出資比率はバイドゥが55%、吉利が45%で、新会社の従業員は年内に1500人、2022年には3000人に増やす計画という。

バイドゥはすでに自動車メーカーに、自動運転、スマートコックピット、車載OS、地図アプリなどを提供しており、集度汽車の夏一平CEOは4月の上海モーターショーでも「今年後半はApolloを搭載した新車種が毎月1台発売される」と明らかにした。一方で自社ブランドのEVについては、「来年4月のモーターショーで、コンセプトカーを披露する」「1年~1年半ごとに新車種を発表する」と述べるにとどまっている。

バイドゥの知名度は高いが、スマホを手がけファンを獲得してきたシャオミやファーウェイと違って、消費者へのブランド訴求力は高いとは言えない。夏CEOは自社EV構想を「今ある車とはまったく違う、ロボットに近いものになる」とも説明しており、自動運転システムなどを自動車メーカーに供給しながら、自社では「独自性」「ハイテク」を追求した製品を発表する可能性が高い。

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