不動産登記「オンライン申請」実践して見えた課題 どこまで行政手続きの電子化を進められるか

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2005年の不動産登記法改正以前にしか不動産登記の経験がない人であれば、申請書用紙に記載された「登記識別情報」や「不動産番号」を知らない人は多いだろう。不動産登記が紙から電子データに移行したときに、従来の紙の登記済証の代わりに発行される本人確認のための符号(パスワード)が登記識別情報、このときに土地・建物1筆ごとに整理番号として付与されたのが不動産番号だ。

不動産番号は古い登記事項証明書には記載されていないが、一般財団法人民事法務協会が運営する「登記情報提供サービス」を使えば、1筆に付き334円の手数料で、インターネットで簡単に調べることはできる。

抵当権抹消登記に必要な添付情報は次の4つ。

  • a)登記識別情報(又は登記済証)=抵当権設定した金融機関が保有
  • b)登記原因証明情報=住宅ローンを完済したことを証明する金融機関の弁済証書
  • c)会社法人等番号=金融機関の法人番号
  • d)代理権限証明情報=金融機関の委任状

金融機関から提出されたのは「紙の書類」

登記申請日の朝に金融機関から提供されたのはすべて紙の書類だった。その金融機関では、住宅ローンの関係書類をA4サイズの紙の封筒に利用者ごとにファイリングして本部の書庫で管理しており、必要になったときにそのファイルを支店に配達しているという。最近では住宅ローンの電子契約サービスを提供する金融機関も増えてきているが、それ以前は紙の書類のままで管理しているのが実態だろう。

金融機関に寄ったあと、さいたま地方法務局へ。登記申請書に所定の登録免許税(1筆に付き1000円)の印紙を貼付して、添付書類とともに窓口に提出した。すると、小さい紙を渡され、11日後以降にこの紙と印鑑を持って「登記完了証」を受け取りに窓口に来るようにと書かれている。さすがに面倒なので郵送できないかと聞くと、書留用の返信封筒を送ってくれば返送するという。

「やれ、やれ、済んだ」と思っていると、約1週間後に登記官から電話がかかってきた。「登記済証が足りないので、金融機関に確認してほしい」という。慌てて金融機関に電話すると、ファイルの中に一部紛れて渡し忘れていたので取りに来てほしいとのこと。返信用封筒と一緒に残りの登記済証を郵送すると、しばらくして登記完了証が送られてきた。これを金融機関の担当者に見せ、抵当権抹消を確認して終了である。

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