住友VS三井不動産、「借金王」と「業界盟主」の接戦 直近業績は明暗くっきり、行方を占う財務戦略

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業績の明暗が分かれたカギは、ポートフォリオの構成にある。

住友不は営業利益の7割を、もっぱらオフィスビル賃貸が稼ぎ出した。残る3割も分譲マンションや戸建て、不動産仲介が中心で、コロナ禍の影響が甚大だった商業施設やホテルの割合が少ないことが奏功した。対する三井不はホテル・リゾートが含まれる「その他」セグメントの営業損益が272億円の赤字と、前期から約300億円も減少し、これが全体に響いた。

テレワークの影響が懸念されるオフィスだが、住友不が保有するオフィスビルの空室は今年3月末時点で2.8%。2020年3月末の1.4%からは上昇したものの依然低水準にとどめた。「リーマンショック時はオフィス需要が消失したが、今回はまだら模様だ。契約と解約が拮抗している」(尾䑓取締役)。

今2022年3月期は三井不が純利益トップの地位を奪還する見通しだ。ホテルなどの稼働が上向くことが一因だが、より貢献するのは財務戦略に基づく物件売却益の伸長だ。今後の不動産会社の業績動向は、ホテルや商業関連事業よりも、各社の財務戦略が命運を左右すると言ってよい。

住友不が首位を明け渡したもの 

「三井不がトップに立った」――。

1回目の緊急事態宣言が発出された、ちょうど1年前の2020年5月中旬。大手各社が発表した2020年3月期決算の内容に、不動産関係者がざわついた。三井不の有利子負債が3兆4811億円に達し、長らくトップだった住友不(3兆4409億円)を追い越したのだ。2021年3月期も、東京ドームを買収した三井不の有利子負債が膨らみ、その差は開いた。

住友不は有利子負債の額が突出して多いことで、かねて有名だった。同業他社が物件売却により早期に資金回収を行うのに対して、住友不は開発したビルを自社で保有し、中長期的に賃貸収入を享受することを基本方針としている。そのため借入金の返済スピードが遅い。その「借金王」の座が、住友不から三井不へと明け渡された。

不動産開発への投資を加速した三井不は、中長期で保有する物件だけでなく、「1兆円程度に収めたい」(菰田正信社長)としている投資家向けの収益物件も、2021年3月期末の残高が1兆2582億円まで膨張した。同社は財務規律として総資産8兆円、有利子負債4兆円を掲げるが、2021年3月末時点で総資産は7.7兆円、有利子負債は3.6兆円に拡大している。

三井不は今後、開発だけでなく資産の売却にもアクセルを踏む。三菱地所も三井不ほどのペースではないが、総資産と有利子負債は右肩上がり。両社の資産売却の方針を象徴するのが、虎の子物件の放出だ。

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