河井事件の1.5億円、うごめく「二階降ろし」の策動 二階幹事長の「不関与発言」が党内外で大炎上

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ただ、安倍政権下で1億5000万円支出が確認された際には、党内で「甘利氏が安倍首相や菅義偉官房長官の意向を受けて支出を決めた」とうわさも流れた。林氏の説明はそれを踏まえたものともみえる。

買収事件を引き起こした河井夫妻は、克行被告が安倍、菅両氏と極めて近く、案里氏は当選後、二階派に入会していた。案里氏の選挙応援に駆け付けたのは当時の菅官房長官で、選挙期間中の案里氏との「ツーショット写真」が話題となるほど肩入れしていた。

二階発言で「疑惑」が表舞台に

案里氏とともに自民公認で広島選挙区に立候補して落選した岸田派重鎮の溝手顕正・元参院議員会長に対する党本部からの選挙資金は案里氏の10分の1の1500万円だった。この党本部の露骨な対応に、党内には「安倍さんに批判的だった溝手氏の追い落としを狙った策謀」(岸田派幹部)との声も出ていた。

だからこそ、1億5000万円支出の経緯と使途が、一連の河井夫妻の公判とも絡んで注目の的となった。今回の二階氏の不関与発言は、これまでくすぶってきた疑惑を表舞台に上げる結果となり、「政局絡みの権力闘争の材料」(同)と深読みする向きもある。

二階氏の発言については、自民党広島県連会長代理の中本隆志県会議長が18日、「無責任で情けない。これほど県民を侮辱した言葉はない。(4月の)再選挙で(自民候補が)敗北したのはやはりこの1億5000万円が一番大きな原因だ」と怒りを爆発させた。

県連会長の岸田氏も同夜のBS情報番組で「送金に誰が関与したかではなく、金が何に使われたかだ。論点をごちゃまぜにするとおかしなことになる」と二階氏や林氏の対応に苦言を呈し、きちんとした使途の説明を求めた。

一方、国会会期末の政権攻撃を狙う立憲民主党の安住淳国対委員長は18日、「圧倒的な金銭をなぜ河井さんにだけ渡したのか。原資が政党交付金など国民の金である以上、説明する必要がある」と国会で徹底追及する考えを強調。共産党の志位和夫委員長も「二階氏は執行部だ。こんな無責任な発言はない」と厳しく批判した。

国政選挙における自民党幹事長の持つ権限は絶大とされる。行政府の長である首相となる党総裁に代わって、選挙での公認権や党資金の配分などを自在に決めることができるからだ。特に、在任期間歴代最長を更新し続けている二階氏は「これまで以上に、党運営のすべてを支配している」(閣僚経験者)とみられている。

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