河井事件の1.5億円、うごめく「二階降ろし」の策動 二階幹事長の「不関与発言」が党内外で大炎上

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それだけに党内でも「二階氏が1億5000万円もの支出を知らないことなどありえない」(幹事長経験者)との声が支配的で、「二階氏があえて関与を否定した裏には、何かしたたかな計算があるはず」(自民長老)と受け止める向きが多い。

「決裁は総裁か幹事長」と指摘した下村氏は安倍前首相の最側近で、岸田氏も安倍氏と親しいことで知られる。このため、二階氏サイドは党内の動きについて「安倍氏の周辺が幹事長に責任を押し付けようとする、『二階降ろし』の画策だ」と身構える。

沈静化に追い込まれた二階陣営

18日に林氏が「根掘り葉掘り、党の内部のことまで踏み込まないでもらいたい」と記者団を牽制したのも、そうした党内の不穏な空気を意識したものとみられている。ただ、「その対応自体が火に油を注ぎ、国民の疑惑も拡大させるだけ」との批判も広がる。

こうした状況に二階氏サイドも沈静化に乗り出さざるをえず、林氏は18日に甘利氏に電話で「他意はなかった」と陳謝した。二階氏も事態の展開を見極めたうえで、週明けの24日の会見の際に、改めて党本部の対応を説明する構えだ。

そうした中、克行被告の東京地裁での公判は18日に結審した。検察側の求刑は懲役4年、追徴金150万円。弁護側は執行猶予付きの判決を求め、克行被告は意見陳述で声を震わせながら「十字架を背負って歩く」などと悔悟と反省の弁を述べた。ただ、1億5000万円については「買収には1円も使わなかった」と繰り返した。

判決言い渡しは6月18日で、2020年の河井夫妻の逮捕の日と同じだ。現状では実刑は免れないとみられているが、「起訴内容の大半を認め、自らの行動を謝罪し、衆院議員も辞職したことで、執行猶予の可能性も出てきた」(司法関係者)との見方もある。

もし、判決で執行猶予となれば、意見陳述で「どうか一刻も早く、ふるさとの土を踏ませていただき、有権者の皆様に謝罪をさせていただきたい」と涙まじりに訴えた克行被告は控訴しない可能性が大きい。その場合、捜査当局が自民党本部から押収した資金支出に関する書類も早期に返還されることになる。

二階氏らはこれまで、「書類が戻れば公認会計士などのチェックを受けて、1億5000万円の使途についてもきちんと説明する」と繰り返してきた。しかし、党内には「結局、誰が決裁したかはあいまいにしたまま幕引きを図る魂胆では」(閣僚経験者)と勘繰る向きが多い。

「政局絡みでの責任のなすりつけあい」にみえる今回の騒動は、「安倍・菅政権特有のおごりと隠蔽体質」(首相経験者)を浮き彫りにしたことは間違いない。「次期衆院選勝利による疑惑帳消しを狙っても、かえって有権者から厳しいしっぺ返しにつながる」(自民長老)と、自民党内の不安は広がるばかりだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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