アップルが「7色のiMac」を発売する深すぎるワケ リモートワークにとって非常に重要な機能だ

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さらにこだわりが強いのはスピーカーだ。フォースキャンセリングウーファーを伴う6スピーカーを採用し、空間オーディオに対応。Apple TV+などの映像作品だけでなく、5月17日に発表されたApple MusicのDolby Atmos Audio対応によって、包み込まれるような音場空間を追加スピーカーなしで、iMac本体だけで楽しむことができる。

日々のオンライン会議をふりかえってみると、特にカメラやスピーカーやマイクは、快適に会議に参加するために重要な要素だ。AirPodsを装着して会議に参加していても、耳が煩わしくなってくるし、バッテリー切れで音声が途切れる。何も装着せずに会議に参加できるオーディオ品質はそれだけで価値があるし、明るく顔が映し出されれば、バーチャル背景に頼ることもない。

また広くなった画面は、会議の映像を見ながらほかの資料を編集する、リモートワークにも最適だ。新しいiMacで数日仕事をしただけでも、パンデミック後のワークスタイルを意識したマシンであることが伝わってくる。それだけに、エンタメと仕事の時間のバランスをいかに両立するか、という個人的なジレンマが強調されてしまうのだ。

コンピューターとの新しい付き合い方

アップルはiMacを通じて、つねに新しいコンピューターを提案してきた。今回の刷新はApple Siliconへの移行というアップル全体の大きな流れの1つと位置づけられるが、今回使ってみて改めて気づいたことは、現代の自宅の中におけるコンピューターの使われ方を、徹底的に分析している点だ。

4.5kg以下という軽さもあり、普段使うデスクから、ダイニングやベッドルームに移動させて使う、新しい過ごし方にも対応できそうだ(筆者撮影)

4.5kg以下という軽さは、iMacを家の中で可搬する使い方も提案している。基本的にはデスクに置いておくが、ダイニングテーブルで家族と一緒に昔の写真を楽しんだり、ベッドルームに持ち込んでベッドに寝転がりながら映画を楽しんだり、複数の場所に移動させながら使う、今までのデスクトップコンピューターになかった価値をもたらしてくれた。

画面の拡大、カメラの向上、スピーカーの大幅な進化は、確かに映像や音楽の試聴体験そのものを大きく向上させるが、これらはオンライン会議をベースとするリモートワークにとって非常に大きな快適性を提供することにもつながる。多色展開だけではない、iMacが持つ本当のマーケティング力に気づかされる瞬間だ。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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