ソニー・シャープの液晶連合、パネル供給不足で暗雲
ソニーが追加出資に慎重になる要因は、デコミットだけではない。米ディスプレイサーチによると、世界的に供給不足のパネルも、12年には最大2割近く供給過剰に逆転する可能性があるという。中国で12年稼働を目指し複数社がパネル生産投資を進めており、価格の大幅下落も予想される。業界で「2012年問題」として懸念されている。
ソニーにとっては、2年待てば容易にパネル調達ができるようになる。むしろ最大限の34%出資をした場合、パネル合弁の業績悪化が持ち分損益にはね返り、自社業績の重荷となる可能性もある。資産圧縮による固定費削減を志向するハワード・ストリンガー会長にとって、追加出資の意味は見いだしにくいだろう。
別の調達先を検討
新たなパートナーもソニーに急接近している。EMS(電子機器受託生産サービス)の世界最大手、台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)だ。ソニーは鴻海に今年9月末までに二つのテレビ組立工場を売却し、欧米向けテレビ生産の大部分の委託を進めている。将来的には、パネル調達の委託も検討している。
ソニーは過去にも鴻海からパネルでの提携を持ちかけられたことがある。03年ごろに郭台銘CEOがソニー幹部に「パネル生産を始めるので合弁しないか」と打診したが、当時は鴻海側に技術や生産実績がなく実現しなかった。
だが昨年に世界4位のパネルメーカーである台湾・奇美電子を買収するなど、現在はグループ全体ではシャープを上回る供給力を持つまでになった。鴻海はソニーにとって強力なパートナーであり、シャープにとってサムスンに続く新興ライバルともなりうる。
産業の趨勢が変われば、企業戦略も変わってくる。ソニーとシャープの合弁の行方も揺れている。
(杉本りうこ =週刊東洋経済2010年5月15日号)