駅でトラブル続出、「やらかす」撮り鉄の心理 撮影場所奪い合い、暴力行為に発展した例も

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今回、西川口駅でのトラブルで「駅撮り」という言葉が出たが、駅撮りとは、文字通り駅で列車を撮影することを指す。駅での撮影は最も手軽で、撮影地・撮影場所を探す必要もなく、交通費も節約できる。

西川口駅でのトラブルでは、彼らが撮影したかった目当ての列車は快速「あしかが大藤まつり」という臨時列車で、定期運行を引退した185系を撮影したかったというのが本心となろう。西川口駅ではなく、もっと遠い場所に行けばきれいに撮影できる場所はたくさんあるのだが、遠ければ交通費がかかってしまう。子供や学生にとって片道1000円以上もかかる交通費は大金だ。

この駅でのトラブルがニュースとなった後、SNS上では「#もう無理駅撮りできない」というハッシュタグのもと、数々の意見が飛び交った。だが、ここで自分の写真を出して発信したことが写真の自慢とみなされ、さらなる反感を買っているようにも見える。

どうして「やらかす」のか?

さて、撮り鉄はどうしてトラブルを繰り返すのだろうか。実のところ、これは撮り鉄に限った話ではなく、撮影機材を持たせて同じ条件で「撮ってきてください」とやれば、鉄道に関心のない人でもトラブルを起こしてしまう。もっと言うと、「撮り鉄の作法」を知らない故に、「やらかす」確率はさらに上がると言ってよいだろう。

一例として、鉄道と関係なく、路上で記念写真を撮るとしよう。写真を撮るためには、撮影機材を構えている自分と、撮りたい相手の間で距離を置く必要があるが、いざシャッターを切ろうとした瞬間、見知らぬ他人が割って入ってきた。シャッターを切った自分は「邪魔をされた」と不愉快になるし、撮られた側は「路上で自分の写真を勝手に撮られた」ということで不愉快になる。さあ、ケンカの始まりだ。

このような形で、障害物が写り込めば誰でも不愉快になる話なのだが、鉄道の場合は、あたかも撮り鉄が特別な悪さをしているように見えるから、不思議なものだ。

撮り鉄が私有地に勝手に入ったり、草刈りや伐採を勝手にやったりする事例も批判されるが、これは撮り鉄に限らない。コロナ禍の前の話だが、北海道では観光客が雄大な景色を見ようとして勝手に農地に入り、畑を荒らしてしまったこともあったし、京都でも観光客が住宅地に流入して生活に支障が出るといった事例もある。観光客の大半は普通の人で、こちらのほうが事態は深刻だったりするのだが、撮り鉄のトラブルがニュースになると、あっという間に忘れ去られてしまった。

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