競馬である。
自分の予想に興奮し、その2分後に絶望することを毎週繰り返しているが、この週末は、興奮が2分ではなく、3分ちょっと続く、珍しい機会である。天皇賞、3200メートルのいまや日本唯一の長距離G1だからだ(2日、阪神競馬場の第11レース)。
今年の舞台は、淀(京都競馬場)の3200ではなく、仁川(阪神競馬場)の3200ということで変則的である。だが、京都と阪神の違いもさることながら、そもそもの「3200メートル」「2マイル」という距離自体が、それと、当日の馬場状態のほうが重要だろう。
残念ながら、日本に生粋のステーヤーはいなくなってしまった。メジロの冠名で有名だったメジロ牧場の北野ミヤさん(北野豊吉氏の妻)の逝去やメジロ牧場の廃業で、日本のすばらしいステイヤー(長距離血統の競走馬)の伝統は、この連載の共同執筆者の1人であるかんべえ(双日総合研究所・チーフエコノミスト吉崎達彦氏)さんの愛する、ステイゴールド(死去)やオルフェーブル、ゴールドシップなど数少ない産駒だけが受け継いでいる。
これらは細くとも永遠に続いてもらいたいと思っている。
私としては、なんといってもメジロマックイーン(1991年の春の天皇賞優勝馬)である。名騎手だった岡部幸雄氏のせいで、クシロキングというマイラー(1600メートルを中心とする中距離血統馬)に天皇賞を勝たれてしまってから(岡部は2マイルを1マイル2回のレースに変えたと賞賛された。当時1番の長距離血統と言われたシーホーク産駒のスダホークは1番人で惨敗)、「ステイヤーの時代は終わってしまったか」と嘆いていた私に「一筋の光明」を与えてくれた馬だったのである。
春の天皇賞は「2頭のマッチレース」を期待
さて、マックイーンといえば武豊騎手であり、怪我が癒えて1日から待望の復帰を果たしているのだが、今年私が狙っているのは武豊騎手が乗る馬ではなく、和田竜二騎手が騎乗するディープボンドだ。
岡部騎手はシンボリルドルフ、武豊騎手はメジロマックイーン、そして、和田騎手はテイエムオペラオーと、代表的な馬がいるように、名手は名馬に育てられるという。
和田騎手は地味ながら名手であり、長距離は名手の出番だ。さらに、ディープボンドは、ディープインパクトに含まれるステイヤーの血を開花させつつあるキズナの産駒だ。
遅れてきた2020年代の名ステイヤーとして、ぜひとも名を残してほしい。実際、前走はすばらしい走りで、他馬を圧倒した。4歳になって馬が充実しており、ここも圧勝までありうる。
一方、前走では圧倒的人気ながら、ディープボンドに負けただけでなく、惨敗したアリストテレスにもがんばってほしい。馬場が普通なら復活してほしいし、今の日本に必要なのは、アリストテレス(あるいはソクラテス)のような、自分で思索する力である。この2頭のマッチレースを期待する。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら