列車とホームの隙間埋める「秘密兵器」の開発者 JRや大手私鉄が続々と採用、足元の安全支える

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極めて特徴的な形状だが、この形状になったのは先行商品があったから。先行商品は日本の大手商社・双日の韓国現法が販売していたゴム製の製品で、2008年3月に沖縄県の沖縄都市モノレール(通称ゆいレール)が転落防止用に導入したのが国内最初の導入事例である。

相次ぐ乗客の転落事故を受け、「運輸局のアドバイスで韓国製くし状ゴムの存在を知った」(沖縄都市モノレール)という。

この韓国製の製品には天板がなく、くしの部分にヒールや傘の先端が挟まるという欠点があったため、クリヤマの製品はくしの上に天板を付けた形になった。

その後、首都圏、関西圏の大手私鉄やJR各社など、大都市圏の鉄道各社で転落防止用にスキマモールの導入は進み、目下のところ隙間解消用のくし状部材ではスキマモールが圧倒的なシェアを誇る。

ちなみに、沖縄都市モノレールが2019年10月に開業した延伸4駅には、開業時点でスキマモールを配備済み。2008年に取り付けた5駅の韓国製くし状ゴムの交換も含め、既設駅にも段差解消工事に合わせてスキマモールを配備予定で、2023年中の完成を目指す。スキマモールを選んだのは、「いろいろ探したがこれしか見つからなかったから」(沖縄都市モノレール)だ。

大阪メトロは2010年に導入

大阪メトロはクリヤマよりも一足早い2010年に、韓国製くし状ゴムの改良版を世に送り出している。かねてバリアフリー対策に熱心なことで知られ、2018年には『国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰』を受賞している。

ホームと車両の段差・隙間解消に関する研究でも先行。1981年3月開業のニュートラムは、「開業当時から全駅全乗降口にホームドアを設置し、段差・隙間も2㎝〜5㎝を実現できていた」(大阪メトロ広報)という。

国交省が3㎝〜7㎝という数値目標を掲げるのは、この40年近く後の2019年8月。その3㎝〜7㎝をさらに下回る数値を、早くもこの時代に実現していたというのは驚きだ。

大阪メトロは2006年10月開業の今里線でも、開業時から全駅の全乗降口にホームドアを完備。走行方式も、重心が低く車両の揺れが少ないリニア方式を採用。リニア方式は段差と隙間も生じにくいため、こちらも開業時点で2㎝〜5㎝を実現できていた。

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