マスターズV「松山英樹に密着10年」で見た進化 日本人初マスターズ制覇、その知られざる軌跡
「ついに日本人がグリーンジャケットに袖を通します!」
「ついに、ついに…世界の頂点に、松山が立ってくれました!」
ウイニングパットが決まった瞬間、実況のアナウンサーは声を震わせながらこう伝えた。マスターズ制覇の快挙を成し遂げた、プロゴルファー・松山英樹。日本の男子ゴルフ界がマスターズに初挑戦してから実に85年。幾多の名だたる日本人選手がはねのけられてきた高い壁をついに越えた。
日本中に歓喜をもたらした歴史的快挙は、日本人にとって長きにわたる夢であり、松山にとっても大きな夢であった。すべてをマスターズのために捧げてきた男の苦悩と葛藤とは。10度目の挑戦で悲願のグリーンジャケットに袖を通した松山の10年間の物語に迫る。
初めてのオーガスタ挑戦は大学2年
2011年4月、松山はアマチュアだった大学2年時に初めてマスターズに挑戦した。広大なオーガスタナショナルGCを目の当たりにして、「やばい、これはキレイだわ、すごいわ」と素直な感動を口にした。
グリーンやフェアウェイの緑、バンカーの真っ白い砂、そしてコースの周りを彩る花が生み出すコントラストをもつマスターズの舞台・オーガスタは、19歳の青年の心を躍らせた。その光景は、母国を襲った未曽有の大震災直後、日本中の想いを背負って異国の地に立った松山を奮い立たせた。
2011年3月11日。
東日本大震災が、松山が通う東北福祉大学のある宮城県、そして東北地方を襲った。それからひと月足らずでのマスターズ出場。多くの人が亡くなり、そして、今なお大変な思いをしている人が大勢いる中、「自分が出場してもいいのか」と松山は悩んでいた。
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