欧米のワクチン議論、今の焦点は「接種間隔」だ 「人数優先の1回接種」で効果を上げたイギリス

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南アフリカで発見された「B.1.351」など特定の変異株に対しては、モデルナやファイザー/ビオンテックのワクチンの1回接種では限定的な効果しか得られないという最新の研究結果も懸念材料になっている。

コーネル大学医学部のウイルス学者ジョン・ムーア氏は「モデルナやファイザーのワクチンの1回接種でB.1.351のような変異株を防ごうとするのは、突進してくるサイにBB弾の(モデルガン)で立ち向かうようなものだ」と話す。

ムーア氏によれば、接種間隔の拡大はワクチン耐性を持った新たな変異株の流行につながる懸念がある。ワクチン接種を済ませた人々の体内で新型コロナが増殖するうちに、ワクチンによってつくられた抗体を回避する変異株が生まれる可能性があるという。

しかしウイルスの進化を専門とするコビー氏は、2回目の接種を遅らせることで新たな変異株が生まれる可能性は心配していない。「むしろメリットのほうが大きいと断言できる」というのだ。

アメリカが方針転換する可能性は低いが…

コビー氏は先日、接種間隔の延長を支持する論考を共同研究者と連名で専門誌『ネイチャー・レビューズ・イミュノロジー』に寄稿した。ワクチンの効き目が多少下がったとしても、接種人数を増やしたほうが感染を止めるブレーキの効果は大きくなる、という主張だ。そして感染が減れば、救える命の数が増えるのみならず、変異株の出現と拡散の確率も下げられる。

アメリカが方針転換する可能性は低いとみられるが、北の隣国カナダは2回目の接種を遅らせる戦略を採用した。ワクチンの供給量が限られる中で、勢いを増す感染に対処するためだ。

カナダ政府の免疫タスクフォースで委員を務めるマギル大学の公衆衛生専門家キャサリン・ハンキンス氏は、1回接種の有効性を示す研究結果が蓄積されてきていることを理由に、この決定を支持した。そして、カナダ以上にワクチンの確保に苦慮している国でも、同様の路線変更が検討されるべきだという。

「世界レベルでカナダの取り組みをよく観察して(接種間隔の引き延ばしを)本気で考える材料にしてもらいたい」とハンキンス氏は言う。

(執筆:Carl Zimmer記者)
(C)2021 The New York Times News Services

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