「やらされSDGs」多い日本企業に欠けた重大視点 力強い成長へ理解しておきたい「4つの型」

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1973年に設立されたアメリカのアウトドア用品製造・販売のパタゴニアは早くも1990年代に「最高の商品をつくり、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」とのミッションステートメントをつくり、2018年に「私たちは故郷である地球を救うためにビジネスを営む」に進化させた。

アメリカのタイルカーペット販売のインターフェイスは1994年に「2020年までに環境への負荷をゼロにする」とのビジョンを掲げ、経営を変革してきた。

ミッション・ドリブン型では、その会社のすべての事業が「ミッション」を実現するために存在し、「ミッションへ貢献するかどうか」が「採算性」と同じレベルで重要性を持つ。

歴史を持つ大企業は「未来志向型」へ移行すべき

テスラやインポッシブル・フーズのように、創業時から環境・社会課題解決をミッションに掲げる企業が多い一方で、パタゴニアのように創業から一定期間を経たあとであらためてミッションを掲げる企業や、インターフェイスのように何らかのきっかけ(創業者が1冊の本に感銘を受けた)で環境・社会課題解決に目覚める企業もある。カリスマ的リーダーとして知られるパタゴニアやインターフェイスの創業者はすでに退任しているが、その思いは従業員に脈々と受け継がれている。

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ここまで説明した4つの型のなかでは、「④ミッション・ドリブン型」がサステナビリティ経営の実現には最も理想的だ。しかし、創業からの長い歴史を持つ多くの大企業は、事業ポートフォリオがバラエティーに富み、数多くのステークホルダーとの関係がある。そのため、大胆に事業を変え、「ミッション最優先」に経営の舵を切っていくことは現実的に難しい。

サステナビリティ経営の4つの型を紹介してきたが、企業は「①インシデント型」から「②外部要請型」または「③未来志向型」へ、もしくは「②外部要請型」から「③未来志向型」へと、変化していくことが多い。

例えば、インシデントによる株価の下落や、不買運動で売り上げが減少した企業の中には、その後、環境・社会問題の重要性を認識し、今では「③未来志向型」の企業として業界をリードする企業となった例も少なくない。

これからの新しい時代に力強く成長しようと思うなら、外発的な「やらされサステナビリティ経営」からいち早く脱却し、自分たちの意志による「③未来志向型」のサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)への移行が不可欠だ。

坂野 俊哉 PwCサステナビリティ合同会社

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ばんの としや / Toshiya Banno

東京大学経済学部卒、コロンビア大学MBA。日本生命保険、ブーズ・アンド・カンパニーを経て現職。20年以上のコンサルティング経験を有し、経営戦略、事業ポートフォリオ、事業戦略、海外戦略、アライアンス/M&A(PMIを含む)、企業変革などの経験が豊富。業界経験は、商社、保険を中心に、エネルギー、化学、自動車、産業機器、電気電子、消費財、流通、公共など多岐にわたる。PwC Japanグループのサステナビリティ・センター・オブ・エクセレンスのエグゼクティブリードも務める。

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磯貝 友紀 PwCサステナビリティ合同会社

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いそがい ゆき / Yuki Isogai

2003年より、民間企業や政府機関にて、東欧、アジア、アフリカにおける民間部門開発、日本企業の投資促進を手掛ける。 2008年より世界銀行アフリカ局にて民間部門開発専門官として、東アフリカを中心に民間部門開発、官民連携プロジェクトなどを手掛ける。2011年より現職、サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンスのテクニカルリードとして、日本企業のサステナビリティビジョン・戦略策定、サステナビリティ・ビジネス・トランスフォーメーションの推進、サステナビリティリスク管理の仕組み構築、途上国における社会課題解決型ビジネス支援やサステナブル投融資支援を実施。

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