免許歴20年超の運転にデータ分析で見えた弱点 トヨタ「モビリタ」で安全運転プログラムを体験

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日常なかなか出くわさないさまざまなシーンでの運転を体験できる(撮影:正久 仁)

インストラクターの車速と比較すると、そうしたミスはグラフ上に描かれた波に表れている。本来はカーブの手前で車速を落とさなければいけない場所で、わずかに高い車速で通過してしまっている。うまく曲がりきれず、意図せず滑ってしまうことで、思い通りの走行ラインを辿れていない状況だ。

滑りそうになるのをフォローしようと、カウンターを当てながら走っていたが、ハンドルを二度切りしてしまったり、車速が高すぎることに気づくのが遅れて、ブレーキを強めに踏まざるをえなくなり、姿勢を乱しがちになる。いったん滑り出してしまうと、それ以上ハンドルを切り込んでもクルマはどんどん外側に膨らんだラインを辿っていくため、ハンドルを戻せない状況に陥るワケだが、そうした状況も操舵角のデータに如実に表れていた。

リスクを予測し、判断して走ることが重要

インストラクターによれば、そうしたリスクを予測し、判断して走ることが安全にドライブするうえでは重要だという。カーブ手前で車速を落とし、通過してからアクセルで車速を高めていくほうが安全に走れるということだ。

あらためて、自分自身の走りをデータで可視化してみると、知らず知らずのうちに、自らがリスクを招く運転操作を行ってしまっていることに気づく。短い時間ではあったが、客観的に指摘してもらい、問題点に目を向けることで、普段の運転に対する関心が高まっていくと思った。

中でも、感覚的にクルマと向き合いがちな女性の場合、メカニズムや理論といった話はあまり身近なものではなく、場当たり的な操作になりがちで、漠然とした怖さや不安を抱きがちだ。その点、今回のような体験は、自分のドライビングに足らないことが具体的に見えてくることで、自分自身の運転の問題点を認識することができる。

また、不安を払拭するためにやるべきことが見えてくれば、あとは目標に向かって素直に取り組むだけだ。そうした心情は女性に限った話ではなく、運転経験が浅く、不慣れなドライバーにとっても同じだろう。

私は免許を取得して20年近くなるが、こうした体験プログラムは、免許取りたての人もベテランのドライバーにとってもメリットは大きいと思う。運転技術向上の取り組みは、始めるのが遅すぎるということはないし、ハンドルを握るドライバーの責任として、安全運転に努める義務もある。

モビリタでは、参加した際のデータは保存され、過去の走りと比較することもできるとのこと。何度かトライしてみて、現時点のスキルを確認することもできるそうだ。運転に関心をもって取り組むことは、安全運転に直結する。こうした気軽に参加できるプログラムは、家族や友達同士など、楽しみながら安全を考えるうえで、多くの人たちに体験してみてほしいと思った。

藤島 知子 モータージャーナリスト

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ふじしま ともこ / Tomoko Fujishima

幼い頃からのクルマ好きが高じて、2002年より市販車やミドルフォーミュラカーなどのレースに参戦。2017年は女性初のプロレースシリーズの競争女子選手権「KYOJO CUP」に参戦するなど、自身のドライブ体験を通じたレポートも行っている。現在はレース活動で得た経験や走り好きの目線、女性目線をもとに自動車専門メディアやファッション誌などに寄稿。テレビ神奈川の新車情報番組『クルマでいこう!』は出演10年を迎え、お茶の間にクルマの楽しさを幅広い世代に向けて発信している。趣味は国内外問わず、好奇心の赴くままに走る冒険ドライブ。日本自動車ジャーナリスト協会会員、2019-2020 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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