「破壊的な変革」を実現させるDX成功のコツ 「DXの70%が失敗している」背景に何があるのか

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それゆえ、彼らがリーダーシップを発揮するために適切な報酬制度なども構築する必要があります。このように免疫システムの強さを理解し、適切な対応をするのが優れた変革リーダーと考えます。

「知識のアップデート」で変化を予見する

4つ目のポイントは「知識のアップデート」です。DXは、企業に大きな影響をもたらす一方、陳腐化するのが非常に早いため、知識のアップデートをいかに実施するかが重要であると考えます。これには2つの目的があります。新しいビジネスモデル/オペレーションを模索することと、既存のビジネスモデル/オペレーションが、新たなデジタル技術によって破壊される可能性を予見することです。

アップデートの方法はいろいろありますが、具体例を挙げると、ベンチャーキャピタルとの連携、彼らの投資動向をチェックする、クライアントやパートナー企業との定期的な交流、隣接する業界の顧客情報やデジタルアンバサダー(テクノロジーに精通したユーザー)の活用などがあります。

情報ソースを一部に限定せず、多くのソースを活用することが重要です。しかしながら一方で、すべての新しいデジタル技術をつねにリアルタイムに習得し続けることは不可能です。各々のビジネスモデルや目指すべき破壊的変化の方向性に照らし合わせ、テクノロジーの取捨選択をすることも肝要です。

『なぜ、DXは失敗するのか? 「破壊的な変革」を成功に導く5段階モデル』の著者であるトニー・サルダナは、P&Gのグローバルオペレーションを長年リードし、デジタル技術により、そのオペレーションを大きく変革してきました。グローバルレベルでオペレーションを展開するGBS(グローバルビジネスサービス)の業界では、P&Gのオペレーションは、つねに世界のトップレベルだと言われています。

そのような経歴を持つ著者が、P&Gの組織の中で、シェアードサービスにおける破壊的変化を創出し、自ら実行するための組織である「ネクスト・ジェネレーション・サービス(NGS)」を立ち上げ、実行する中で得てきた知識・経験を語っています。

また、P&Gに限らず、ネットフリックスやスペースXなどの新興企業から、ゴールドラッシュ時代の馬車メーカーなど、最新の他社事例だけではなく、過去の歴史から汲み取ることができる示唆も豊富です。

トニー・サルダナは、「なぜ、DXが失敗するか?」という問いに対する答えとして、DXを軌道にのせ、継続させるためのステージを定義し、それぞれのステージを正しく実行させるための規律が欠けているからだと説明しています。

その企業がDXを使って発展・継続するステージは「DXの5段階モデル」として定義され、戦略、方法論、組織、文化など多岐にわたる観点からそれぞれのステージでのあるべき姿があります。

これらのあるべき姿と各ステージで実施すべきことについて、具体的な「チェックリスト」で確認できます。

日本企業においても、上記の4つのポイントを押さえて、DXの活用対象組織(オペレーションモデル)としてのGBS、DX人材の採用の方法と育て方、テクノロジーの3つの観点で戦略を考えることで、DXへの取り組みの成功率が高まることを願っています。

髙見 陽一郎 EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ビジネスコンサルティングリーダー パートナー

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たかみ よういちろう / Yoichiro Takami

Big 4系監査法人にて、法定監査・株式公開支援に従事した後、日系投資業の在外子会社のコントローラー、CFOとして米国駐在約9年の間に、同社の財務経理部門全般の改善、高度化を実現。その後、外資系コンサルティング会社を経て、2010年にEYに参画し、経営管理・子会社管理改善支援、経理財務関連業務プロセス改善、IFRS導入支援等のファイナンス領域を中心に支援している。公認会計士。

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