「怒りっぽい子ども」が増加している悲しい事情

「義務教育を放棄する中学生」まで現れだす現状

いったいどういうことか。

「診察を重ねていくと、どうやらこのたびの不登校の子どもたちは、私が今まで相談に乗ってきた、いわゆる“学校に行きたいのに行けない”子どもではなく、“学校には行く必要がないから行かない”と考えている印象です。もちろん、前者のようなケースの相談もありますが、緊急事態宣言の発令で学校が急に休みとなり、登校が再開したかと思えば、異なるクラスや学年の感染により再び休校となる。しかし、家族や友人が誰もが健康であり、『コロナはただの風邪』なんて話す大人までいる。その結果、一部の子どもは『学校は休んでも問題がないのでは』と疑い始めているのです」

これまでであれば、親が「学校へ行きなさい!」としかりつけることに、一定の効果はあっただろう。しかし、コロナ禍を経て、「え? どうして行かないといけないの。だって、学校へ行かなくても何とかなっているよ」が、一つの回答として間違いではないことが示されてしまった。

ゲームに依存しているのではないかという不安は、入り口にすぎず、奥へと進むと子どもと保護者の関係性に関する悩みがほとんどだという。「義務教育という、ある種の洗脳が解けてしまった。学力が低下することを危惧する保護者もいます」と山下氏が指摘するように、コロナ以前では通用した親から子への教育のフォーマットも、ニューノーマルを迎えているというわけだ。

どうすれば「子どもとの軋轢」を防げるのか?

保護者の戸惑いはイライラとなり、子どもにも伝わる。先の第4回「コロナ×こどもアンケート」では、「すぐにイライラするか?」という設問もあるのだが、小学生以上の子どもを持つ保護者の36%が該当すると答えている。さらに、子どもたち自身も、小学1~3年生32%、小学4~6年生37%、中学生42%、高校生27%が、「すぐにイライラする」と回答しているほどだ。いつ割れるともわからない巨大風船が膨らみ続けている。

こうした軋轢をどのように解決したらいいのか。山下氏に尋ねると、「我々としても初めてのケースなので、日々向き合っている最中」と前置きした上で、「親の価値観を見つめ直さないと、子どもを導くことは難しい」と説明する。

「私が、診察室で『どんな親だったら子どもは言うことを聞くと思いますか』と親御さんに尋ねると、多くの方が言葉に詰まってしまいます。『何と言えばいいか教えてください』と聞かれることもしばしばです。しかし、大切なことは“何を言うかではなく誰が言うか”です。『学校に行くのは当たり前。子どもの仕事は学校に行き勉強をすること』では、子どもは納得しないのです。この話は子どもに限った話ではなく、誰だって、尊敬や信頼できない人からのアドバイスに耳を傾けたいとは思わないですよね」

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