富士通は信用回復できるのか、露呈した企業統治への甘い認識

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富士通は信用回復できるのか、露呈した企業統治への甘い認識

昨年9月、突然の社長辞任に端を発した富士通の一連の騒動は、元社長が取締役2名を相手取り、50億円の損害賠償を求める株主代表訴訟を起こす事態となりそうだ。また、元社長の事実上の解任理由となった、「反社会的企業との付き合い」で、名指しされたとして当該企業が名誉棄損で富士通の取締役2名を訴えると公表。さらに、野副氏側の2度目の会見では、辞任を迫られた会合の録音(→全文はこちら)が公開されるに及んで、いよいよ泥仕合の様相を呈している。

そもそも野副州旦(くにあき)氏の突然の辞任によって、富士通の構造改革が遅れるのではないかという懸念はあった。だがそれよりも、富士通という企業の信用という点で、より深刻な問題をはらんでいる。

形骸化した取締役会

企業統治(コーポレートガバナンス)という考え方が一般的でなかった時代ならいざ知らず、現在の一部上場企業、しかも業界をリードするような大企業とは思えない、と首をかしげたのは筆者だけではないだろう。

2002年に米国で起きたエンロン事件、日本国内では電力会社のデータ改ざんなどといった不祥事も重なって、コーポレートガバナンスに対する市場、社会の目が厳しくなり、06年にはJ‐SOX法も制定された。時間とコストをかけ企業統治と内部統制に関する体制整備を進めて、現在は上場企業であれば、表向きの体裁はおおむね整っている。

こういった改革が主に目的としたのは、経営トップによるインサイダーや、詐欺や横領といった明らかな会計上の不正等、違法行為の発生を防ぐために監視を強める、ということだ。だが、富士通の場合、現時点でそういった違法行為の事実は浮上していない。


■4月22日に野副氏(右端)は再び会見を開いた

にもかかわらず、4月7日の会見で、野副氏は、「取締役会ではない密室の謀議により、事実上の解任に追い込まれた」という。同14日には富士通側も反論の会見を開いたが、週刊東洋経済等でも既報のとおり、どうにも歯切れが悪く不可解さが残るものだった。それを受けた野副氏側は、同22日に再度会見を開き、富士通の反論は虚偽である、と反ばくしている。

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