60台で美術展の常識を覆す「万能ライト」の正体 知る人ぞ知るメーカー・ミネベアミツミが開発

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このサリオが、美術館の新しい照明のあり方をもたらす製品として注目されている。背景にあるのは、美術館展示の変化だ。

通常、美術館の照明は作品を設置した後に調整が加えられる。ただ、絵画の壁面展示を中心とした近代美術型の展示と異なり、現代美術では床に広く展開する作品も多い。

サリオの遠隔操作機能が役立つ

このような作品の上部に設置された照明を手動で調整したくても、床に作品があることから高所作業車などを置くスペースがないため、調整のたびに作品を移動させる手間がかかる。作品の上部から照明を当てることを諦めることもあり、美術館展示における制約の1つとなっていた。

Chim↑Pom 京都市京セラ美術館 「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ) 1989–2019」展示風景 Photo: Kioku Keizo

サリオの場合には、作品を設置した後でも手元で光を調整することができるため、器具の調節の手間が減るだけでなく、多様な作品に柔軟に対応して最適な照明をあてることができる。「平成美術」展で照明デザインを担当した灯工舎代表の藤原工氏は、「美術展示が絵画の展示から現代美術に変わってくるにつれて、照明に期待される質が変わってきた」と話す。

現代美術では、個々の作品を展示するだけでなく、空間全体を作品とみなす「インスタレーション」という表現手法も重要だ。サリオはインスタレーションの可能性も広げている。

一般的に、複数の作家の作品を展示するグループ展では、1組1組の作家のゾーンを壁で仕切り、それぞれの空間の明るさや色温度を個別に設定している。そのため、それぞれの空間における明るさを決めるベース照明と、個別の展示物を強調するスポットライトの2種類が使われている。

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