商船三井に惨敗の日本郵船、それでも愚直に総合路線

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商船三井に惨敗の日本郵船、それでも愚直に総合路線

3月26日、大井埠頭。貨物トラックが岸壁を猛スピードで疾走、赤い鉄骨で組まれたガントリークレーンが次々に日本郵船の大型船「NYK VENUS」号にコンテナを載せていく(写真)。

この光景を見るかぎり、コンテナ船の荷動きはリーマンショックの激震から立ち直ったように見えるが、VENUS号はアジア経由でオランダやドイツに向かう欧州航路の船。荷動きが増え、運賃がようやく採算水準を超えてきたのは欧州航路くらいのもので、たとえば、北米航路は荷動きの回復が鈍く、依然赤字運賃だ。

2010年3月期の経常赤字304億円は過去最悪で34年ぶりの赤字転落だが、足を引っ張ったのがコンテナ船などの定期船部門。最悪期を脱したとはいえ1~3月期も赤字。通期では554億円の部門赤字だ。

商船三井に勝てない最大理由はバラ積み船

国内最大の海運売上高を誇る日本郵船だが、利益では商船三井に及ばない。04年3月期から10年3月期までで0勝7敗。連敗は先々代の草刈隆郎社長から先代の宮原耕治社長への代わり目に始まり、宮原時代は全敗。11年3月期も勝てそうになく、工藤泰三(やすみ)社長の連敗は必至だ。

「海運市況に振られるので、利益は面積、10年分の合計で見ている」と工藤社長は打ち明けるが、“面積”で勝っていたのは4年前の06年3月期まで。過去10年分の経常利益合計の差は4年で3600億円強まで膨らんだばかりか、今11年3月期は4000億円に迫る勢いだ。

収益力に差がついた最大の理由は日本郵船が中国爆食に乗り遅れたからだ。商船三井は中国での資源需要の長期沸騰を先読みして、鉄鉱石などを運ぶ大型バラ積み船、いわゆるケープサイズを大量発注。安い船価で仕入れたことが高収益の源泉となっている。日本郵船のバラ積み船担当の小笠原和夫製鉄原料グループ長は、「商船三井が新造船を大量発注した02、03年ころ、当社は発注をフリーズしていた」と悔しがる。

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