アサヒが「ビール風味の低アル飲料」に託す使命 オリオンビールも若者向けの市場開拓を狙う
厚生労働省は「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」を、1日当たり摂取量で男性40グラム、女性20グラムとしているが、商品に含まれる純アルコール量(グラム量)を消費者自身で把握するには、飲酒量(ml)と度数(%)にアルコール比重である0.8を乗じる必要があり手間もかかる。
そこでアサヒビールは3月30日からHP上で順次、商品ごとのアルコール量のグラム表示に踏み切った。酒類メーカーはこれまでも、HP上で適正飲酒への呼びかけを行うなどの取り組みを行ってきたが、飲酒量を控えてもらうことは会社の利益と相反するため、踏み込んだ行動はできていなかった。
「(適正飲酒を促す)具体的な答えを、商品として用意できていなかったことに気づいた」。アサヒビールの梶浦氏はそう振り返る。その答えとして、アサヒビールでは2020年12月、多様なお酒の飲み方を提案する「スマートドリンキング宣言」を発表。国内において2025年までにアルコール度数3.5%以下の商品構成比が20%になることを目指すとしている。
【2021年4月11日19時20分追記】初出時の表記を一部修正いたします。
3.5%以下の商品構成比は現状で約6%であるため、今後起きる変化の大きさは消費者にもわかる。商品の純アルコール量でみると、変化はより明確だ。アルコール度数5%の「アサヒスーパードライ」は、容量350mlで純アルコール量は14グラム。度数0.5%のビアリーは、同じ容量で純アルコール量は1.4グラムとスーパードライの10分の1だ。
「日常的に飲む人」以外も開拓したい
ビアリーは消費者の健康志向の強まりに対応する一方で、低迷するビール市場を代替するために新たな層を開拓したいという企業の本音もみえる。
日本の20代~60代の人口は8000万人。アサヒビールの分析によると、そのうち日常的に飲酒を楽しむ人、飲酒が月1回未満の人はそれぞれ2000万人いる。残りの4000万人はお酒を飲めない、または「飲めるが飲まない人」だ。
ビールなどを含めた酒類市場は、少子高齢化や若者の酒離れなどを背景に減少が続いている。「これまでは2000万人いる『日常的に飲む人』だけを相手に商売してきたが、それ以外の人たちの取り込みを考えなければならない」(梶浦氏)局面に入っている。
ビアリーがターゲットとする層は、「ビールが好きな人」だ。その中には、ノンアルコールビールと通常のビールのどちらかしか選べなかったことで、飲酒を諦めていた層も含まれている。梶浦氏は「アルコール度数の選択肢を増やすことで、ビールを飲む間口を広げることになるだろう」と期待する。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら