ドイツと日本「テレワーク格差」が拡大したワケ 日本人は「出社したがり病」に見えている

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また社員たちが自宅から契約書などに電子的に署名したり会社のスタンプを押したりできる態勢を整えることも重要だ。

ドイツでは多くの企業のIT担当者たちが2020年3~4月に突貫作業を行って、大半の社員がテレワークをできる態勢を短期間で作り上げることに成功した。大企業を中心に、デジタル署名や電子スタンプも浸透した。IT部門によるインフラ拡充・増強の努力がなかったら、大規模なテレワークの実施は、絵に描いた餅に終わってしまっただろう。

ドイツ人に学ぶ消耗しない働き方

この結果、製造業や店頭での小売業などを除く多くの企業では、大多数の社員が出社しなくても売上高や生産性を維持することに成功し、業務に大きな支障は出なかった。

それどころか、「テレワークのほうがオフィスで働くよりも生産性が高い」と考える人も少なくない。DAKが2020年7月に公表したアンケート結果によると、約7000人の回答者の内「テレワークのほうがオフィスよりも生産性が高い」と答えた人の比率は半数を超えていた。また「テレワークに適した業務ならば、自宅でもオフィスと同じように処理できる」と答えた人の比率は、80%を超えた。

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Bitkomの調査でも、回答者の過半数(57%)が「テレワークのほうが生産性が高い」と答えており、「生産性が低い」と答えた人の比率(9%)を大きく上回った。

あるドイツ人は「会社の大部屋で働いていると、なかなか1つの課題に集中できないことがある。テレワークの場合は、集中して作業をできるので、オフィスでの仕事よりも効率がよい」と語っていた。

本記事で述べてきたように、ドイツでは今、コロナ禍が引き金となって、新たな働き方改革が推し進められている。テレワークをどのように定着させれば、市民そして企業にとってベストの結果が得られるか。ドイツで湧き起こっている議論には、われわれ日本人がワークライフバランスの改善について考えるうえで、大いに参考になる内容が含まれている。

熊谷 徹 在独ジャーナリスト

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くまがい とおる / Toru Kumagai

1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。1990年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に『ドイツの憂鬱』『新生ドイツの挑戦』(ともに丸善ライブラリー)、『あっぱれ技術大国ドイツ』『ドイツ病に学べ』『住まなきゃわからないドイツ』『顔のない男 東ドイツ最強スパイの栄光と挫折』(すべて新潮社)、『なぜメルケルは『転向』したのか ドイツ原子力四〇年戦争の真実』『ドイツ中興の祖 ゲアハルト・シュレーダー』(ともに日経BP社)、『偽りの帝国 フォルクスワーゲン排ガス不正の闇』(文藝春秋)、『日本の製造業はIoT先進国ドイツに学べ』(洋泉社)、『5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人』(SB新書)など多数。『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』(高文研)で2007年平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞受賞。ホームページ:http: //www.tkumagai.de

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