「SDGs?日本は昔から三方よし」論に欠けた視点 「環境技術で先進的」は過去、特許で存在感低下

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日本企業は環境技術でかつては先進的だったが、もはや過去の栄光である。1970年代の2度の石油危機を機に省エネを促進し、製造業は1990年までの20年間にエネルギー効率を4割近く改善したが、1980年代後半以降は横ばいとなっている。

エネルギー、省資源などのグリーンイノベーションに関する特許件数も、日米欧中韓全体の特許件数に占める割合で見ると、2006年は55.3%だったが2014年には27.8%と大きく落ち込んでいる。

太陽電池では、かつて世界の上位5社のうち4社を日本企業が占めていたこともあり、2005年に47%にまで上がった。だが、2012年には約6%に低下するなど、再生可能エネルギーにおける日本企業の存在感は大きく低下している。

自分に都合のいい「よし」にしてはいけない

また、「三方よし」の「よし」のとらえ方についても、一面的・我田引水的にならないように注意すべきだ。

「石炭発電は安価なエネルギー源であり、開発途上国の発展に欠かせない。開発途上国の人々の生活の質の向上という『よし』を生み出している」という主張をよく耳にする。石炭火力発電は安価なエネルギーとして、長年、開発途上国の発展を支えてきたというプラス効果はあった。

だからといって、「大きな環境負荷を生み出す」というマイナス効果を無視してよいわけでは決してない。「安価で、かつ、環境負荷の少ないエネルギー源」に変更すべきであり、代替できる物がなければ「それを開発したい」という強い思いが、新しい技術革新につながる。自分に都合のいい「よし」だけに焦点を当てていると、よりよい「よし」を実現する可能性を閉ざしてしまうことになりかねない。

自分に都合のいい「よし」という意味では、自社の一部の事業だけを見て、「よし」を実現できていると思い込んでいる経営者もよく見かける。

「わが社では、社会課題を解決するこんな事業を行っている」と大々的に喧伝しているが、よく話を聞いてみると、その事業は若手社員がボトムアップで始めた小さなプロジェクトでカネもヒトも配置されず、戦略的にも重要案件と位置づけられていない。それ以外の99.9%の事業は、短期利益を目指して相変わらず外部不経済を生み出している、ということがしばしばある。思い当たるところがある人は、早急に考えをあらためてほしい。

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