新型「ハリアー購入者」に見るトヨタSUV戦略 フルラインナップですべての競合に勝つ盤石さ

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これまで見てきた「最終比較検討車」「購入時の前提条件」「重視項目」からわかるように、車種の特徴がはっきりと出ている。

では、それぞれの車種がどのようなポジションを取るのか。複数のブランドのポジションの違いを可視化する分析手法である「コレスポンデンス分析」を使って確認してみよう。分析データは、購入車に対するイメージ項目を使用する(ハリアーを購入した人はハリアーへのイメージを回答)。

■購入車のイメージ(コレスポンデンス分析)

 

青いプロットがイメージ項目、赤いプロットが車種である。統計上の詳細は割愛するが、距離が近い項目同士は関連性が高いことを意味している。横軸は、右にいけばいくほど「アウトドア・本格派」、左にいけばいくほど「都市型・高級」と定義した。縦軸は上を「先進」、下を「伝統・安定」としている。

結果は一目瞭然で、ハリアーは「高級」「豪華」「洗練」「都会的」といったイメージと非常に近い位置にある。一方でRAV4は「カジュアル」「軽快」「頑丈」「アウトドア・自然が似合う」といったものと距離が近い。ハリアーとRAV4ははっきりと左右にわかれているので、トヨタはほぼ同じサイズ感のSUVを2車種販売しつつも、キャラクターを際立たせた車種開発ができていると言えよう。

フォレスター購入者が最も比較するクルマはRAV4であるという結果を先の「最終比較検討車」で紹介したが、RAV4とフォレスターの距離が近いことからも、この結果は納得できる。

また、CX-5の比較車も「最終比較検討車」のとおり、1位:RAV4(11.6%)、2位:ハリアー(11.4%)とかなり僅差であった。CX-5から見たハリアーとRAV4の距離はほぼ同じであるので、クルマを購入しようとするとき、車種に抱くイメージから比較車種を選定するという1つの側面が読み取れる。

あらゆるSUVニーズに対応するラインナップ

このようにトヨタ車同士で競合しつつも各車種のキャラクターを明確にし、同時に売上台数を伸ばしている背景には、2020年の販売チャネル統合の影響があるだろう。チャネル統合に伴いトヨタ全体として、他メーカーとの競争により強く出られるようになっている。

「SUVが欲しい→トヨタを中心に検討したい」という人を集客できれば、そこから先は「ライズ」「ヤリスクロス」「C-HR」「ハリアー」「RAV4」「ランドクルーザープラド」「ランドクルーザー」とよりどりみどりだから、顧客ごとに最適な車種を提案できる。

トヨタで最もコンパクトなSUV「ライズ」ば、167万9000円~(写真:トヨタ自動車)

また、「メーカーはまだ絞ってないがSUVが欲しい」という人に対しては、車種のラインナップが多いトヨタは自然と選択肢に入る。そうすることでトヨタ車が検討のテーブルに上る可能性を上昇させ、「SUVが欲しい→トヨタを中心に検討したい」という人を集客する好循環が加速する。

世界的なブームの陰りはまだ見えないうえに、電動化の波も相まって、今後もニューモデルの投下やフルモデルチェンジが期待されるSUV市場。盤石なトヨタの今後のSUV戦略、そしてトヨタの牙城を崩すような切り札が他社から繰り出されるのか、楽しみな市場である。

三浦 太郎 インテージ シニア・リサーチャー

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みうら たろう / Taro Miura

北海道大学大学院理学院卒業後、インテージ入社。自動車業界におけるマーケティング課題の解決を専門とし、国内最大規模の自動車に関するパネル調査「Car-kit®」の企画~運用全般に従事。

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