バイデン米大統領は今週、同盟国と共に中国に圧力を加えるという選挙公約を果たした。新疆ウイグル自治区での人権侵害に関与しているとして欧州連合(EU)と歩調を合わせ制裁を科した。
中国政府の対応は、米国の同盟国に対する可能な限りの激しい反撃だった。EUが22日に制裁を発動したことを受け、中国はすぐさまEUの当局者や団体を対象とした報復制裁を打ち出し、EUの駐中国大使を呼び出した。中国の制裁対象となったのは各国の政治家や外交政策を策定するEUの主要機関、中国研究で欧州最大の研究機関などだ。
米国とEUが中国制裁、ウイグル族などへ人権侵害-中国も即報復
制裁を科せられたドイツの調査機関、メルカトル中国問題研究所の理事で在中国欧州連合(EU)商業会議所(中国欧盟商会)の会頭を務めるヨルグ・ワトケ氏は「中国が愚かなことをしているのは極めて残念だ」と述べ、昨年12月に合意されたEUと中国の投資協定は棚上げされる可能性が高いとの見方を示した。
同氏はその上で中国は米国の同盟国に対し、米国以上に厳しく対応しているようだと指摘。中国は国の規模を見ているとし、「米国に対してはより慎重であり、カナダとオーストラリア、EUに対しては徹底反撃する」と語った。
米アラスカ州で先週開かれた米中外交トップ会談では、双方が激しく衝突。中国が「内政問題」と見なす新疆ウイグル自治区や香港、台湾などを巡り、習近平政権は国際社会の批判を受け付けない姿勢を鮮明にした。
「米国第一」を掲げたトランプ前政権は痛みを伴う貿易戦争を仕掛けただけでなく、長きにわたり米国と同盟関係にある各国との関係を悪化させ、中国との関係強化も許した。だが、バイデン政権との初の直接会談で中国側が見せたスタンスは、地政学的に分かれる陣営のより明確な線引きにつながるリスクがある。
米中外交トップ会談、非難の応酬-バイデン政権初の対面協議
「ほんの始まり」
豪マッコーリー大学でアジア太平洋地域の安全保障を研究しているベイツ・ギル教授は「ほんの始まりにすぎないかもしれない。一方で中国、一方で典型的にリベラルな民主主義の先進国があり、双方が相手側がどれだけの痛みを許容できるか試すことになる。特にハイテク貿易や投資、資本市場へのアクセスといた分野でデカップリング(切り離し)が大きく広がる可能性があり、そう想定しておくべきだ」と述べた。中国はアラスカ会談後、以前からの盟友である北朝鮮とロシアとの関係強化を目指す方針を表明した。
中国、北朝鮮とロシアとの関係強化目指す-米外交トップとの会談後
中国外務省の華春瑩報道官は北京で23日午後に開いた定例記者会見で、新疆ウイグル自治区は「成功を収めた人権の物語」だと主張し、新たな対中制裁を今週科したEUとカナダ、米国をそろって非難した。
華報道官の批判対象は過去数世紀にも及び、奴隷貿易や帝国主義、ナチズム、米国で昨年起きた黒人男性暴行死、さらには新型コロナウイルスワクチンが買い占められているとされる問題にも言及。「人口の少ない」国々からの批判を一蹴し、これらの国々の結束を「偽」多国間主義と嘲笑した。22日にはスパイ容疑で2年余り前に中国で拘束された元カナダ外交官マイケル・コブリグ氏の事案を審理する北京の裁判所周辺に20カ国余りの外交官が集まっていた。
当局によって厳しく管理されている中国のソーシャルメディアは23日、中国政府の報復制裁を支持するナショナリズム的な投稿であふれた。欧米には人権侵害が事欠かないとの政府見解を繰り返し、政府の新疆ウイグル政策への支持を表明していた。国連は新疆ウイグル自治区でイスラム教徒のウイグル族を中心に100万人以上が拘束されていると推計している。
馬雲氏に代わり「兎主席」が人気-言論統制の中国、愛国的な論客台頭
それでも、一部には中欧関係、特にEUとの投資協定の今後について懸念を示す声もあった。微博(ウェイボ)上では「新冷戦が来るのか?」との投稿に6000件以上の「いいね」が集まった。「包囲網を敷かれることは中国に有利に働かない」との意見だった。
豪州の元外交官で中国の人権問題に詳しいローウィー研究所のナターシャ・カッサム世論・外交政策プログラムディレクターは、EUとの投資協定を失敗させることになったとしても、中国は報復制裁と欧米批判を続ける可能性が高いと分析。「習政権下の理論が非生産的な政策の見直しを妨げることはよくある。中国当局はグローバルな世論よりも力の誇示を優先しているようだ」と語った。
原題:China Lashes Out at U.S. Allies in Bid to Thwart Biden Strategy(抜粋)
著者:Bloomberg News
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら