「専業主婦になりたい人」が知らない高すぎる壁 令和時代に「誰かに養ってもらう」考えの難しさ

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こういう話を聞くと、「それってしょせん経済的にゆとりのない男性の話でしょう? 専業主婦になりたい私が狙っているのは高学歴で高収入の男性だから、高学歴な男性ほど、きっとパートナーに専業主婦を期待する男性は多いはず」という一見、中高年の親世代からすれば「そのとおりかも」と思えるような解釈する女性もいるかもしれません。

しかし、データを見ると、令和時代の若い男性の考え方をあまりにも知らなさすぎる発言と言えるようです(図表2)。

大卒・大学院卒の男性であっても、パートナーに専業主婦を期待している男性は10.8%にすぎません。それもそのはず、今の20代の男女は4大進学率がほぼ一緒ですので、「どうして同じ勉強をしていて、女性だからといって働かないの?」と、論理的思考を持つ高学歴な男性ほど考えるかもしれません。

また、1990年代半ば以降、共働き世帯が専業主婦世帯を超え、今や非農林業世帯では7割が共働き世帯です。若い男性ほど両親が共働きしている人が多数派となっていますので、女性が働かないことが当然という環境に育ってきていないのです。

専業主婦を期待する男性が多いグループ

興味深い結果としては、中卒の男性だけは専業主婦を期待する男性がいまだに5人に1人程度います(回答母数はそれなりに確保されており、他の学歴グループより極めて少ない人数の結果、ということはありません)。

中卒男性は、他の学歴グループに比べて専業主婦になりたい女性にかなりマッチした考え方となっています。むしろ、専業主婦をどうしても、という戦略を持つのであれば、大卒狙いではなくて、中卒狙いが適切、と言えるかもしれません。

いずれにしても、令和時代において生涯のパートナーを持つ視点として、「誰かに養ってもらう」という視点は、成婚への大きな壁となるようだ、ということを女性の皆さん、そのご両親に心にとめておいていただきたいと思います。

また、若い男性を雇用する経営者も「結婚したら家のことは嫁さんに支えてもらって」といった発想に基づく男性社員の働かせ方は、労働者サイドのライフデザインの変化によって加速的に受け入れられなくなってきていることを理解する必要があるでしょう。

天野 馨南子 ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー

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あまの かなこ / Kanako Amano

東京大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。1995年日本生命保険相互会社入社、99年より同社シンクタンクに出向。専門分野は人口動態に関する社会の諸問題。総務省「令和7年国勢調査有識者会議」構成員等、政府・地方自治体・法人会等の人口関連施策アドバイザーを務める。エビデンスに基づく人口問題(少子化対策・地方創生・共同参画・ライフデザイン)講演実績多数。著書に『未婚化する日本』(白秋社・監修)、『データで読み解く「生涯独身」社会』(宝島社新書)等。

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