衆院解散はいつ?自民党内に広がる揣摩憶測 タイミングは5月か9~10月、事実上「二択」に
3月初めには、政治日程予測を記した怪文書が議員会館などにばらまかれて話題となった。自民党議員宛の文書の差出人は「総選挙前に総裁選挙の実施を求める会」となっている。
怪文書は「9月7日総裁選告示」「20日投開票」「22日臨時国会で首相指名」「党・内閣人事を経て27日衆院解散」「10月24日投開票」というスケジュールを記している。さらに10月21日の衆院の任期満了まで臨時国会を開き続け、その日に衆院を解散した場合は11月28日投開票が「公職選挙法で認められる最も遅い総選挙日程」と書かれている。
自民党内では、「9月の総裁選で菅首相が再選されればその勢いで解散できる一方、新総裁となれば、首相指名・組閣後に国会で所信表明を行ってからの解散が可能になることがわかった」(自民幹部)との声が相次ぐ。ただ、怪文書が「総裁再選」と「新総裁誕生」のどちらを狙ったものなのかは受け止め方が分かれる。
菅首相では選挙を戦えない
3月21日に投開票された千葉県知事選は、野党系の無所属新人で前千葉市長の熊谷俊人氏が、自民推薦候補の元県議に圧倒的な大差をつけて当選した。保守分裂選挙だったが、自民系候補の得票は熊谷氏の3割以下にとどまり、「地方選挙での自民への強い逆風」(自民党千葉県連幹部)も浮き彫りにした。
最新の世論調査では内閣支持率は回復傾向にある。政党支持率も自民が野党第1党の立憲民主に大差をつけている。だからこそ自民党内で早期解散論が飛びかうが、相次ぐ不祥事と地方選挙での自民退潮を受けて、「菅首相では選挙を戦えない」(閣僚経験者)との声も出始めている。
公選法では、衆院任期満了の半年前となる4月21日から、次期衆院選候補者の個人ポスターなどの掲示が禁止となる。自民党の現職議員や出馬予定者は、党首とのツーショットのポスターなどへの貼り替えが必要となるが、自民党若手議員の間では不安をもらす向きが少なくない。「その時点でコロナ第4波が現実となっていれば、菅首相と並ぶポスターでは票が逃げる」(当選3回議員)というわけだ。
次期総裁選出馬への意欲を示す岸田文雄前政調会長は21日の党大会後、衆院解散・総選挙について、「時期や大義が国民から見て納得できるものでなければならない。そうでないと選挙は決して良い結果につながらない」と指摘した。菅首相が総裁選と解散・総選挙を政権維持の意図で設定することを牽制したものだ。
菅首相にとっては、「東京五輪成功後に総裁再選を決めてから解散を断行し、自民勝利で新たに3年の菅政権の基盤をつくる」(側近)のが最善のシナリオとされる。しかし、ワクチン接種が国民に行き渡る前に第4波となれば、「五輪開催強行も国民の強い批判につながる」(自民長老)ことは避けられない。
新年度が始まる4月以降の約1カ月間、コロナとワクチン、五輪という3つの政治的難題への対応が、解散時期も含めた菅首相のその後の政局運営を占うカギとなる。
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