岡山では第一線で活躍中、「113系、115系」の現在 昭和、平成、令和を走り続けた都市間輸送の主役

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さて、京阪神輸送の延長線上にある姫路発播州赤穂行きの223系にフワフワと揺られると、播州赤穂では12時38分発の岡山行きに接続した。そこで乗車できたのは、ワンマン2両編成のG-06編成である。ワンマン列車には213系も入るが、異形式のため運用は分かれている。

岡山方の先頭車クモハ114が、切妻非貫通の個性的顔立ちである。前照灯を上部中央とし、行先表示を横に寄せたスタイルは元来の姿や切妻貫通型ともまったく異なり、むしろ通勤形103系、さらに言えばかつての西武鉄道401系(近江鉄道に転じて在籍)を連想させる。

乗り込んでみると、これまた形態分類の興味をそそる。側面の外観は滑らかな40Nだが、座席はボックス席が目に飛び込むセミクロスシート。そして視線を上げると天井も以前のまま、ダクトが中央を走る。ところが内装は改まっており300代編成の古びた印象はない。吊手両端のブラケットはステンレスパイプが天井まで届き、座席幅と間隔が少し広く感じる点から、改良された115系1000代が改造種車であることが伝わってくる。

ボックス席ながら窓の内帯は広く、113系にはなく115系にはあると区別してきたドアの手掛けがなく、引き残しがない。それに対して目を転じれば、前方の客室荷棚上部に機器箱が構え、運転室との間に配線を通すカバーが剥き出しでつながる等々と、独特な仕様を挙げたらきりがなさそうだ。通常はクハにあるトイレが、2両編成の後部の電動車クモハ115に装備されている。

ICカードで変わった乗降風景を見て岡山へ

車両の来歴も興味深い。2両目のクモハ115が1500代ということは、元来は中間車モハ115である。国鉄時代のシティ電車化に伴いオリジナルタイプの先頭構体を接合して先頭車とし、まずは3両編成とされた。その後、JR時代になってワンマン車とするため、さらにモハ114も切妻先頭車に改造した。その際にトイレを失うので、クモハ115を再改造してトイレを取り付けた、と読み解ける。

『鉄道ジャーナル』2021年5月号(3月19日発売)。特集は「昭和の電車・機関車」(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

切妻先頭車の運転台背後に陣取ると、運賃表示器を取り付けた仕切りはやはり天井まで届いておらず、中央の扉も開けて、そこに運賃箱がセットされている。つまり運転室が素通しのため、ノッチやブレーキ操作の音がじかに聞こえる。横一枚の前面窓は意外に低く、後方に立って眺めると、やや視線を下に向ける格好になる。前面窓の中央に、客室確認用の丸鏡がついている。

2両編成全電動車のため加速の勢いはよい。ワンマン列車なので、無人駅で乗車した場合は整理券を取り、下車時は現金・きっぷを運賃箱に投入する方式だが、そのどちらを見ることもなかった。長船から西大寺へ進むうち、少しずつ乗客は増えたが、みなICカードを利用しており、ホームに立つリーダライタにタッチして乗降する。運転士は運賃収受に伴う負担が大きく減り、精算のやりとりに手間取り列車が遅れることも減ったとのこと。

数日後にはだか祭りを控えた西大寺で昼下がりながら乗客を増やし、東岡山から山陽本線に戻る。岡山の一つ手前の西川原は、岡山の次の北長瀬とともに2000年代に設置された新駅だが、駅の表記は「西川原・就実」で、車内放送も必ず「にしがわらしゅうじつ」と案内する。高架の近傍に就実大学・短大の校舎が見える。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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