アメリカ長期金利の「次の節目」はどこになるか 「実質金利ゼロ」まで戻ればアフターコロナに

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4~6月期にはインフレ率だけではなく、さまざまな経済指標が前年比で大幅改善するはずだが、小売売上高や消費者心理など、物価以外の多くの主要指標は前月比で現状把握されているので、インフレ率ほど相場をけん引する力はないだろう。しかし、経済活動制限が解除されれば、レイオフされていた就業者が職場復帰してくることを含めて雇用統計はやはり大きく改善する可能性があり、それ自体は金利を動かす材料になるだろう。

10年金利が2.0%を超えてくるかがポイント

そもそもバイデン米大統領が7月4日のアメリカ独立記念日には日常生活は復活しているとの見通しを口にしている以上、雇用・賃金情勢も4~6月期中に相応の回復をはたしている必要があろう。邪推だが、大統領がそのように述べている以上、FOMC声明文も7月を念頭にアフターコロナを示唆する表現に少しずつ切り替えてくるのではないか。

もちろん、時とともに集団免疫の獲得に近づくのだとすれば、経済活動が徐々に復活していく(はず)なので、7~9月期以降も緩やかな金利上昇と景気回復が併存するという展開は基本的に不変だろう。

しかし、金融市場の期待においては、とりわけ4~6月期が顕著な改善のクライマックスになると予想され、大きな金利上昇とドル買いの到来に構えておきたい。この間に10年金利が2.0%にタッチ、「アメリカ実質10年金利のゼロ」がおおむね実現する中で、ドル円は110円を超える動きがありうると考える。この際、実質金利とドルの上昇を受けた株価が動揺することも十分考えられる。そのような動きになればFRBは国債購入増加などを通じて金利を抑制するだろう。

ただし、そうした展開がアメリカ10年金利が2.0%に到達するよりも前に起きる雰囲気は今のところ感じられない。注目される計数は「アメリカ実質10年金利のゼロ」である。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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