国際貿易の海上輸送力の逼迫が造船市場に波及している。世界の主要な船主たちは次々にコンテナ船の新造を発注。海運業界では輸送力を確保しようと「船の奪い合い」が起きている。
コンテナ船の世界最大の独立系船主であるシースパンは、2021年2月初旬から3月初旬にかけて新造船の発注を立て続けに発表。その数は合計18隻、総積載量は25万8800TEU(20フィートコンテナ換算)に上る。ほぼ同時に、台湾の海運大手の万海航運(ワンハイラインズ)もコンテナ船5隻、総積載量6万5000TEUの新造計画を発表した。
イギリスの調査会社クラークソンのデータによれば、世界の造船所が2021年の年初から3月1日までに受注したコンテナ船は66隻、総積載量53万TEUに達し、それらの建造費の総額は46億ドル(約4997億円)を超える。しかも、このデータには上述のシースパンと万海航運の新造発注が含まれていない。
新造船の発注が活発化したのは2020年の10~12月期からだ。「中国からの輸出に代表される太平洋航路のコンテナ輸送需要が増え続けている。運賃は以前の2倍に値上がりしたが、それでも船を確保できない状態だ」と、クラークソンのアナリストは解説する。言い換えれば、海運市場は今まさに「船を持つ者こそ勝者」の時代を迎えているのだ。
コロナ禍による港湾作業の停滞の影響も
フランスの調査会社アルファライナーのデータによれば、現在、太平洋航路の週当たりの輸送キャパシティーは55万TEUと、1年前より40%増加して過去最大の水準にある。にもかかわらず輸送力が足りないのは、往路と復路の輸送状況が極めてアンバランスであるためだ。
「新型コロナウイルス流行の影響で、(中国から)欧米に向かうコンテナ船は到着港の作業員不足で荷下ろしが遅れ、船の足止めが長引いている。現地での空きコンテナの回収も滞っており、コンテナ船の定時運航率が大幅に低下してしまった」
コンテナ海運で世界最大手のA・P・モラー・マースクの関係者は、財新記者の取材に応じてそう話し、さらにこう続けた。
「今のところ太平洋航路の輸送力逼迫に変化は見られない。コンテナ港には(積み込みや荷下ろしを待つ)大量の貨物が滞留しており、局地的には輸送力がまったく足りない状態だ」
(財新記者:賈天璙、包志明)
※原文の配信は3月11日
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら