「静岡リニア」川勝知事、ダム取水になぜ沈黙?

中部電力川口発電所、国の許可得ず稼働続ける

1989年3月、川口発電所の水利権更新で、最終的には斉藤知事と中電の間で覚書を作成、季節変動で毎秒3立方mから5立方mの河川維持流量を勝ち取った。

1980年代の「水返せ」運動に参加した「大井川を再生する会」の久野孝史会長は「毎秒3立方mや5立方mでは清流が戻ったという実感はなかったが、それでも山本、斉藤両知事は中流域のためにちゃんとやってくれた」と振り返る。

許可期限は「申請中」。水利権許可が得られていないことを示す塩郷えん堤の標識(筆者撮影)

いまのところ、大きな出水がなく、大規模な災害は起きていないが、土砂堆積で河床は上昇している。大井川を管理する県は砂利採取を行うが、土砂はたまる一方で、計画した砂利採取にはほど遠い。もし、災害が起きたら、取り返しがつかないことになると住民らの不安は大きい。それから30年を経て、2019年3月末、川口発電所の水利権更新期限を迎えた。すでに2年経過したが、国の許可が得られないまま、中電は稼働を続けている。現在、審査を行う国交省中部整備局は、河川法に基づいて知事意見を求める準備を進めている。

現在まで、県に水利権更新にかかわる国からの書類は届いていない。当然、川勝知事に川口発電所の水利権更新の手続きは知らされているはずだが、知事は中流域の水問題について、一切のコメントを避けている。

中電にリニア並みの厳密な審査は適用されるか

今回の水利権更新では、30年前の生活防衛だけでなく、自然環境保全を踏まえた1997年の河川法改正が焦点となる。同法の改正で生物の多様な生育・生息環境に必要な流量、河川周辺の地下水位の維持に必要な流量が求められている。つまり、リニア問題で県がJR東海に求める「生物多様性」保全がこちらでも重要視され、水利権更新の審査に反映されなければならない。

何よりも、本州唯一の大井川源流部原生自然環境保全地域を有する川根本町は全域が南アルプスユネスコエコパークの登録区域に当たる。知事はリニア問題では、「南アルプスは多様な生態系が評価された。ユネスコエコパークの南アルプス保全は国際公約だ」などと再三、発言してきた。大井川の中流域にはカジカ、アユカケ、シマドジョウなどをはじめ、多種多様な動植物が確認されたが、多くが絶滅の危機にある。

久野会長は「リニア工事の行われる源流部と同様に、川根本町全域がユネスコエコパーク。貴重な動植物保全という知事の国際公約にふさわしい、中流域の正常流量を県は検証すべきだ」と求める。

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