エアバッグよお前もか!原料不足で供給に不安 発端は米国の寒波、供給不足解消に数年かかる
米国を襲った記録的な寒波の影響などでエアバッグに使われるナイロン繊維の供給不足の懸念が高まっている。車載用半導体に続く、サプライチェーン(部品供給網)における新たな不安材料となる可能性がある。
東レは17日、自動車のエアバッグに使われる「ナイロン66」製の繊維の供給について、契約上の義務の不履行に対する免責を顧客に求める「フォース・マジュール(不可抗力条項)」を宣言していることを明らかにした。米国寒波の影響で複数の化学品メーカーが繊維の原料供給について同様の「不可抗力」宣言をしたため。
原料不足の影響は他社にも広がる。東洋紡も今月、ナイロン66繊維を十分に供給できない可能性があると納入先に通知を出した。フォース・マジュールは宣言していないという。広報担当の植村豊土氏が18日、電話取材で明らかにした。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う販売減から回復の兆しが見える中、コロナ禍による物流の混乱や半導体不足、寒波や地震といった自然災害により自動車各社は工場の稼働停止や生産調整を余儀なくされている。一台あたりの部品数が約3万点にも及ぶ自動車業界での供給網維持の難しさがあらためて浮き彫りとなっている。
英調査会社IHSマークイットのエグゼクティブ・ディレクター、メイコ・ウー氏は、「原料であるアジポニトリルとヘキサメチレンジアミンは欧米の生産者によってコントロールされており、ナイロン66の不足は世界的な問題」と分析。寒波による原料供給への影響を踏まえ「市場参加者は長期間にわたるナイロン66不足を予測しており、向こう6カ月どころか年内には解消しない可能性がある」と述べた。
エアバッグを製造する芦森工業は東レからのフォース・マジュール宣言の通知を受け、現在他社への代替供給を求めることを検討している。同社の広報担当によると、供給ひっ迫の状況が続く可能性があるため、エアバッグの生産調整を実施する可能性がある。生産量への影響については調査中だという。
ナイロンの原料不足を受けて代替製品を供給する動きも出ている。ユニチカは17日、ナイロン66の主成分の1つであるヘキサメチレンジアミンを使用しないナイロン樹脂を開発したと発表。同社によると、ヘキサメチレンジアミンの原料アジポニトリルは自然災害などの影響で供給の不安定な状況が続いており、ナイロン66の供給不足解消には数年はかかると見込まれている。
東海東京調査センターの中原周一シニアアナリストは電子メールで、需給ひっ迫によるエアバッグ用の生地や車載用半導体の値上げや物流コストの上昇を受けて、「サプライヤーが潤沢に在庫を持って、自動車会社が好きな時に好きなだけローコストで調達するというモデルが変化する可能性」があると指摘した。
著者:稲島剛史、竹沢紫帆
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