日本企業「コロナ禍で大健闘」と見る人の大誤解 業績回復は見かけだけ、支援がなかったら?

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以上をまとめると、全企業については、図表2のようになる(支援策が時間的にどのように支出されたかはわからないので、2020年7~9月期と10~12月期に同額ずつ配分した)。

支援策が経常利益に占める比重は、2020年7~9月期で21.0%、10~12月期で14.1%だ。2020年7~12月を通して見ると、16.9%になる。

仮に支援策がなかったとすれば、2020年10~12月期の経常利益は、18.5兆円ではなく、15.7(=18.5-2.8)兆円となっていただろう。

その結果、経常利益の対前年同期比は、0.7%減ではなく、15.7%減となっていたと推計される。

このように、企業の実力ベースの回復力は弱い。

中堅・中小企業だけを取り出すと、図表3のようになる。

2020年7~12月の経常利益14.7兆円のうち約3分の1にもあたる4.8兆円が、政府の支援である。

仮に支援策がなかったとすれば、2020年10~12月期の経常利益は、9.1兆円ではなく、6.7兆円(=9.1兆円-2.4兆円)となっていただろう。その結果、経常利益の対前年同期比は、0.7%減ではなく、25.4%減となっていただろう。

このように中堅・中小企業の回復力は非常に弱い

今後は支援がなくなる

以上で見たように、政府支援が果たした役割は、極めて大きかった。

主として中小企業が対象だが、雇用調整助成金のように、大企業が恩恵を受けた場合もある。

ところが、今後は、こうした支援がなくなる。

それに加え、2021年1月以降は、緊急事態宣言の再発出で、売り上げが減少している。

すると、企業業績はかなり悪化することとなるだろう。

これにどう対処するかが、経済政策の大きな課題だ。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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